ニューヨークのグリニッジ・ビレッジで俳優志望の一人暮らしをするユダヤ人の青年が恋や中絶、友人の死や別れを経験してハリウッドに旅立つまでを描く青春群像。
監督・脚本はポール・マザースキー
主演はレニー・ベイカー、相手役はエレン・グリーン。恋のライバル役はクリストファー・ウォーケン、母親役はシェリー・ウィンタース

あらすじ

ラリー・ラピンスキーは俳優志望のユダヤ人だ。ブルックリンで両親と暮らしている。1953年、22歳でカレッジを卒業すると同時に芸術家志望者が多いグリニッチ・ビレッジに行くことを決意した。過保護の母親は泣いて反対したが、父親が宥めて、ラリーは橋一つ隔てただけの街へ旅立っていった。
ラリーはグリニッジ・ビレッジにアパートを見つけ、芸術家志望の若者たちに仲間入りした。彼らはアニタという自殺癖のある厭世家、詩や脚本を書いているロバート、ホモの黒人バーンスタイン、見た目は良くないが気立てのいい娘コニー、セーラ、画家のバニーだ。ラリーは、美しいセーラと肉体関係を持つ。
ラリーは、昼は健康食品を売るアーブの店で働き、夜は演劇教室に通った。アニタが自殺騒ぎを起こしたときは、みんなでアニタを助けに行った。結局リストカットだけで手当てが済み次第、お茶を飲んでチャップリンの映画を見た。
数カ月後、セーラは妊娠した。ラリーは結婚を申し込んだが、セーラは中絶すると言い張り、ロバートの知人である女医マーシャの手術を受けた。
セーラが健康をとり戻すと、ラリーはアパートでパーティを開いた。アニタは船員と結婚すると宣言し、何故かバーンスタインも船員に一目惚れしたと機嫌が良い。そこへラリーの両親がやってきた。母親はパーティが終わると、ラリーとセーラがセックスをしたのかと尋ね、二人がしてないと否定すると、はじめは疑っていたが最後は機嫌よく帰っていった。
数日後、アニタがまた自殺を企てた。また悪戯だと思ったみんなは一緒に助けに行ったが、アニタは今度は喉笛を切って血の海で死んでいた。ラリーは警察に連絡する。仲間たちはアニタの死を悲しんだ。特にバーンスタインのダメージは大きかった。
ラリーがフォックス映画のスクリーン・テストを受ける日がきた。結果は1、2週間のうちにわかる。アニタの供養としてロバートは仲間たちに、メキシコ旅行を提案した。ラリーはテストの結果待ちだから動けない。コニーもメキシコに行くらしく、ロバートは黒人のバーンスタインも引っぱっていくといった。セーラもメキシコに行きたいと言う。ラリーはハリウッド行きが決まったらサラも連れて行こうと思っていたから、意外だった。
セーラを誘って自分のアパートに連れ帰ったラリーは、彼女がロバートと愛なき肉体関係をもったことを知った。そこへまたラリーの両親が訪ねてきた。母親の目の前で半裸のセーラはラリーに別れを告げて出ていった。全裸のラリーは笑うしかなかった。母親は「グリニッチ・ビレッジがわからない」とつぶやいた。
ハーブさんのお店でアルバイトしているとき、ラリーにスクリーン・テストの合格連絡が来た。ハーブさんも喜んでくれた。
別れの朝、母親はラリーにいった。「祖母がポーランドから、あらゆる迫害を受けながら亡命してきたことを忘れないで、常に身のほどを知り、思いあがるんじゃないよ。ハリウッドでクラーク・ゲーブルに会ったらよろしく」。

雑感

最後は綺麗にまとめて、良い作品だった。
テレビ版で見たからカットが多かったが、本質的な部分を編集でつなげて、うまく編集できていたと思う。

印象的なシーンはやはり仲間が一列になり、全員チャプリンの真似をして歩くもの。名シーンだ。

シェリー・ウィンタースは過保護ママぶりはやはり凄い。でも父親役マイク・ケリンのセリフのタイミングがもっと良かった。その濃さ、暑苦しさに恋人サラ役エレン・グリーンは圧倒されてしまい、ラリーから離れていった。次男坊じゃないと結婚は嫌というタイプなのだろう。子供ができたら、同じ目に合わされるタイプだ。

クリストファー・ウォーケンはテレビから移って、映画で重要な脇役をもらい始めた時期だった。彼のロバート役は満たされない女性を救うために抱く役なのだが、彼自身が全く救われないので共倒れになりかねない危うさがあった。

1953年は朝鮮戦争に行っている仲間も多かったろうが、全くその気配はなかった。ただ街に出ている軍人が多かった。
この時代からカミングアウトしたゲイ(オネエ)がニューヨークにいたのだ。流石に早い。でもこのゲイは芸人ではなく、男娼っぽい。だからいつも絶望しているのだ。

ポール・マザースキーはブルックリン・カレッジを卒業後、23歳でスタンリー・キューブリック監督の商業的処女作「恐怖と欲望」に出演した。そのときの脚本家ハワード・サクラーが本作のロバートのモデルだそうだ。その後コメディアンをやったり、構成作家をやっていたが、自ら監督になり第四作の「ハリーとトント」で注目を浴びて、この第五作は自伝的映画を撮った。そして次回作で「結婚しない女」を撮ってアカデミー賞にノミネートされる。

ちなみにボブ・ディランと女性が肩を並べて歩いている写真が「風に吹かれて」のジャケ写だが、同じ表紙で「グリニッジ・ヴィレッジの青春」という本が書かれている。著者はアーティストのスージー・ロトロ。ジャケ写の彼女だ。内容は1960年前半ボブ・ディランと暮らしていた頃のエピソードなどだ。2008年の出版だから、映画と直接関係ないが、この時代のグリニッジヴィレッジに関する資料としては一級品である。

スタッフ

製作 トニー・レイ 、 ポール・マザースキー
監督 ポール・マザースキー
脚本 ポール・マザースキー
撮影 アーサー・J・オニッツ
音楽 ビル・コンティ
主題曲 「ブルー・ロンド」デイブ・ブルーベック・カルテット

キャスト

ラリー・ラピンスキー  レニー・ベイカー
ママ  シェリー・ウィンタース
恋人サラ エレン・グリーン
自殺マニアのアニタ ロイス・スミス
詩人ロバート クリストファー・ウォーケン
友人コニー   ドリ・ブレナー
黒人バーンスタイン(ゲイ) アントニオ・ファーガス
パパ  マイク・ケリン
健康食品商ハーブ マイケル・イーガン

グリニッジ・ビレッジの青春 Next Stop, Greenwich Village 1976 20世紀フォックス製作・配給

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