1943年、オスカー・ハマーシュタイン二世ジョルジュ・ビゼーのオペラ音楽をアレンジして黒人オールキャストによる「カルメン・ジョーンズ」と言うブロードウェイ・ミュージカルを成功させた。
この映画は、オットー・プレミンジャー監督が戦後にそれを映画化した作品だ。
音楽も大筋もオペラ「カルメン」を真似しているが、第二次世界大戦中の黒人社会に置き換えている。
監督の作品としては、マリリン・モンロー主演「帰らざる河」の後で、フランク・シナトラ主演「黄金の腕」の前に公開された作品にあたる。

 
主演はドロシー・ダンドリッジと「バナナ・ボート」で知られる大歌手のハリー・ベラフォンテ
ドロシー・ダンドリッジはコットンクラブでも歌ったジャズ歌手だが、クラシックの発声に難があったため、そこだけ吹き替えている。
 

あらすじ

 
ジョーはアメリカ南部駐屯地の陸軍伍長。出世街道を歩んでいて、可愛い婚約者シンディ・ルーまでいる。そんなジョーにちょっかいを出したのが、パラシュート工場のカルメン・ジョーンズだった。カルメンは喧嘩で逮捕され、裁判所に護送する役目がジョーに与えられる。ところが途中で色目を使われ一晩楽しんだ翌朝、彼女に脱走される。おかげでジョーは刑務所送りになるが、かえってカルメンに対する思いが強くなる。
カルメンはジョーのことを恋しく思った時期もあったが、時間が経つにしたがって冷めていく。上官ブラウン軍曹に言い寄られていたところを、出獄したジョーが現れ、上官をノックアウトしてしまう。これでMPに逮捕されると、長期の実刑は確実だ。ジョーはカルメンを連れてシカゴに逃げる。
シカゴにはカルメンの友人フランキーがいた。彼女はボクシング王者ハスキー・ミラーのマネージャーの愛人で、ハスキー・ミラーはカルメンのことを前から口説いていた。ジョーは指名手配中なので働けず、代わりにカルメンが働いて養うが、そのうち飽きてしまって、ハスキー・ミラーの元へ通うようになる。ジョーも気付き、ハスキー・ミラーの元に殴り込みに行くが、代わりに倒されてカルメンからも三行半を突きつけられる。
ボクシングの試合が行われる日にジョーは、カルメンを呼び出す。カルメンは、ジョーの顔を見た途端に自分の運命を悟る。
 

雑感

本当に悪いのはブラウン軍曹だな。ブラウンは初めからシンディ・ルーに色目を使ったり、ジョーをカルメンの護送に任命したりして、自覚症状のない一番嫌な奴だった。
カルメンは最初に占いを見てもらった時から、自分の運勢に暗いものを感じていた。最後にジョーに刺された時は、他人の婚約者を横取りした報いを受けたと自覚して死んでいった。罪悪感は持っていたと思う。それでも欲しいものを欲しいと言うのがカルメンという女だ。
 
大歌手ハリー・ベラフォンテの演技は下手。他にも主演映画はあるのだが、全くの大根なのだ。他のメンバーも歌手中心なので歌は良いのだが、とくに演技が上手いと思わない。

 
ところがその中で、歌わせて貰えなかったのにドロシー・ダンドリッジは、史上初めて黒人女性としてアカデミー主演女優賞にノミネートされた。残念ながら、この年は本命ジュディ・ガーランド、対抗グレース・ケリーの年で結局グレース・ケリー(「喝采」)が逆転受賞する。黒人が受賞するには時期尚早だった。さらに5年後のプレミンジャー監督のミュージカル映画「ポギーとベス」にも出演した(主演シドニー・ポワチエ)。しかしこの作品に作曲者であるガーシュウィンの遺族からクレームが付き、劇場公開後、封印作品となってしまう。
その後シドニー・ポワチエが黒人俳優として活躍したのに対して、彼女は目立った活躍がなく、1965年に僅か42歳で亡くなった。
 

スタッフ・キャスト

 
監督・製作 オットー・プレミンジャー
原作 オスカー・ハマースタイン2世
脚本 ハリー・クライナー
撮影 サム・リーヴィット
音楽 ジョルジュ・ビゼー
美術 エドワード・アイロウ
 
配役
カルメン・ジョーンズ:ドロシー・ダンドリッジ(歌の吹替:マリリン・ホーン)
ジョー:ハリー・ベラフォンテ
カルメンの友人フランキー:パール・ベイリー
婚約者シンディ・ルー:オルガ・ジェイムズ
ボクシングの王者ハスキー・ミラー:ジョー・アダムス
ブラウン軍曹:ブロック・ピーターズ

カルメン Carmen Jones 1954 20世紀フォックス配給 黒人だけのミュージカル映画

投稿ナビゲーション