1925年ロン・チェイニー・シニア主演で製作されたサイレント映画「オペラの怪人」のリメイク版で、今回はカラー映画ガストン・ルルーの原作小説をエリック・テーラーサミュエル・ホッフェンシュタインが脚色し、アーサー・ルービンが監督した1943年作品。

主演の怪人役はクロード・レインズ
共演はネルソン・エディ、スザンナ・フォスター、エドガー・バリア
(当時はThe Operaをただのオペラと解釈していたので、このような邦題になった)

あらすじ

バイオリニストであるクローダンは、左手の故障によりパリ・オペラ座交響楽団を解雇された。彼は、給料の全てをオペラ座で歌手として働く、同郷のクリスティヌのレッスン費に注ぎ込んでいた。無職になった彼はレッスン費用のため協奏曲を書き上げ、プレイエルの音楽出版社に持ち込んだ。しかしプレイエル自身は見ていなくて、代わりに大ピアニストのフランツ・リストに弾かせていた。そのことで喧嘩となり、クローダンはプレイエルを殺害した。しかし彼の女秘書に硫酸をかけられ、顔面が醜く爛れて、衣装を盗んでパリ・オペラ座の地下迷宮に逃げ込む。

彼はクリスティーヌをプリマドンナにするべく、ビアンカロリに薬を飲ませて舞台を休ませ、代役のクリスティーヌを舞台に立たせる。舞台は成功したが、回復したビアンカロリは翌日の舞台から戻ると宣言する。
それを聞き怪人クローダンはビアンカロリを楽屋で襲って暗殺した。バリトン歌手のアナトールは、逃亡した覆面の怪人を追う。しかしオペラ座を知り尽くしている怪人に天井から落とされかける。

翌日は休演かと思われたが、ラオール・ドーベル刑事の判断で別の代役を立てて公演を行う。クリスティーヌは出演させなければ、怪人が動くと考えたのだ。
怪人はシャンデリアを落として騒ぎを起こし、混乱した隙にクリスティーヌを誘拐して地下室に連れ込む。アナトールはクローダンをおびき出すために彼の作曲の演奏をフランツ・リストに依頼する。フランツ・リストの演奏を聞いた地下のクローダンは、ピアノを弾き、クリスティーヌに歌わせる。その声に気付いたラオールとアナトールが地下室に駆けつけ、ラオールの射った弾はそれたが、壁が崩れて怪人は下敷となって死んだ。
その後、事件を乗り越えてクリスティーヌは、オペラ座のプリマドンナに成長した。

雑感

「オペラの怪人」は1909年にゴシック作家ガストン・ルルーによって書かれて、1916年にドイツで初めてサイレント映画化されている。

パリ・オペラ座の地下が入り組んだ構造になっていたのは、史実らしい。
俳優ロン・チェイニー・シニアの「オペラの怪人」(1925)は映画化第二弾だが、アメリカのユニバーサル映画サイレント作品で、これと「ノートルダムのせむし男」が大成功したおかげで、ユニバーサルはホラー映画のヒット作を次々に撮るようになる。
エリックは生来の醜さで怪人になり、髑髏のような顔だと言うのは原作の立場をとっている。

一方、戦中のユニバーサル・ホラー・ミュージカル映画となった本作はややホラー成分が薄くてスリラー程度だ。アナトールとラオールの恋の鞘当てコメディ部分の方が目立っている。ロマンティック・スリラーという感じだ。

最近のミュージカル「オペラ座の怪人」はクリスティーヌ、ラウル、ファントム(怪人)の三角関係を描くことが多い。そう言う立場から見たら、本作の怪人はリアルなストーカーでしかない。

しかし最初のホラー路線から現代の三角関係路線への通過点と言える。

今見ても状態の良いフィルムを使っているので、非常に美しく、見る価値はある。何しろアカデミー撮影賞と、アカデミー色彩美術賞を受賞した。ユニバーサル・ホラー映画でアカデミー賞を受賞したのはこれだけだったそうだ。

ネルソン・エディは声楽家で、ジャネット・マクドナルドとオペラ・ミュージカル映画で八本に共演した。その後、ユニバーサルに呼ばれて本作に出演した。
この映画の歌声に関しては、ネルソン・エディとスザンナ・フォスターは自分の声で歌っているが、ジェイン・ファラーは吹き替えを使っていた。

クロード・レインズは英国の舞台俳優でユニバーサル・ホラー映画「透明人間」のタイトルロールを演じ、のちにヒット映画に次々と出演した名優。

 

スタッフ

監督アーサー・ルービン
製作ジョージ・ワグナー
脚色エリック・テイラー、サミュエル・ホフェンシュタイン
脚本ジョン・ジャコビー
原作ガストン・ルルー
撮影ハル・モーア、ハワード・グリーン アカデミー撮影賞
音楽エドワード・ワード
美術アレクサンダー・ゴリッツェン  アカデミー色彩美術賞

キャスト

アナトール・ガロン:ネルソン・エディ
クリスティーヌ:スザンナ・フォスター
クローダン:クロード・レインズ
ラウール・ドーベル刑事:エドガー・バリア
指揮者フェレッティ:レオ・カリーロ
アミオット:J・エドワード・ブロムバーグ
ルクール:フリッツ・フェルド
ヴィユヌーヴ:フランク・パリア
ジェラール:ヒューム・クローニン
作曲家リスト:フリッツ・ライバー
楽譜商プレイエル:マイルス・マンダー
歌姫ビアンカロリ:ジェイン・ファラー

 

 

 

 

 

 

オペラの怪人 Phantom of the Opera 1943 ユニバーサル製作・配給 カラー版ユニバーサル・ホラー

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