ワイオミングのネイティブ・アメリカン保護区に住む人たちの哀しみを描く「ウインド・リバー」(Wind River)は、2017年にアメリカ合衆国で公開されたフィルム・ノワールである。監督・脚本はテイラー・シェリダン、主演はジェレミー・レナーエリザベス・オルセンが務めた。

 
この作品は2017年5月に開催された第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、シェリダンが監督賞を受賞した
 

あらすじ

 
真冬のアメリカのワイオミング州ネイティブアメリカン居留地。ハンターであるコリーは18歳少女ナタリーの凍死体を発見する。ナタリーは亡き娘の親友なのですぐわかった。
FBIの新人特別捜査官ジェーンが到着するが、フロリダ生まれで雪とは無縁のため、何から手をつけて良いかわからない。そこでコリーに協力を依頼する。

翌日コリーはナタリーの父親から、彼の娘が誰かと付き合っていたと告げられる。しかし、父親は娘を信頼してそれ以上は問い質さなかった。
検死の結果、性的暴行を数回受けていたが、死因は殺人ではなく、肺出血で血が寒さで凝固して窒息死したのだ。殺人でない以上、FBIの支援は受けられずあくまで部族警察で対応しなければならない。

コリーはボーイフレンドの名がマットであること、石油掘削現場の警備員だったことを突き止める。ところが翌日、マットの遺体が野ざらしになり野獣に食い荒らされているところを発見される。

その夜、コリーはジェーンに自分の娘が川のほとりで死んだこと、原因不明であることを伝える。

 
ジェーンは部族警察を連れて、石油採掘現場に訪れ、職員と面会する。職員たちは、屈強な姿で銃を持っており、初めから雰囲気が悪かった。ジェーンがマットがどこにいたのかを知りたいと主張する。

そこで職員たちの回想シーン。
マットとナタリーはトレーラーの中で抱き合っていたが、同僚のピートたちが酔って二人を引き離し、マットを殴り倒し、ピートはナタリーに性的暴行を加える。マットは抵抗している間に瀕死のナタリーを何とか逃がしたが・・・。

 
現実に戻って、ジェーンは隠れていたピートのライフルにより負傷する。
他の部族警察からの応援は全員撃たれて死ぬ。職員たちがジェーンを仕留めようとしたとき、伏兵であるコリーがピート以外の警備員たちを撃ち殺す。そしてピートを気を失った状態で捕え、山の頂上に連れて行く。

コリーは靴を脱がしたピートを自白させた後、手錠を外してナタリー同様に雪山を逃してやるが、少し走ったところでピートはナタリーと同様に肺出血で亡くなる。

ジェーンを見舞った後、コリーはナタリーの父マーティンを久しぶりに訪ねる。彼は死化粧をして自殺する気だったが、ぐれて家出した息子から連絡があり、今から迎えに行くと言う。その前に二人は一緒に、互いに失なった娘の死を悼む。

ラストで、アメリカ先住民族のうち行方不明になった女性の統計データがないことが示される。

 

雑感

 
年中雪で覆われたワイオミングは、入植民あるいはネイティブ・アメリカンとして連れてこられた人間の住むところ。道路は通っているが、それ故に転々としか家がなくて、冬に暴漢に追われて逃げ出したら、雪の中で凍死するしかない場所だ。

 

この映画にハードボイルド成分はあっても、ミステリ要素はない。犯人グループもまた、暖かい地方にいられなくて、こんな僻地に流されてきた連中だ。だが彼らはこの気候に適応できなかったから、性の捌け口を被害者に求めたのだ。
 
ハーヴェイ・ワインスタインが映画の上映権を買収し製作総指揮になったが、セクハラ事件で失墜したので、クレジットから消されてしまった。
 

 

スタッフ・キャスト

 
監督 テイラー・シェリダン
脚本 テイラー・シェリダン
製作 ベイジル・イヴァニク、ピーター・バーグ、マシュー・ジョージ、ウェイン・L・ロジャース、エリザベス・A・ベル
製作総指揮 エリカ・リー、ジョナサン・ファーマン、ブレイデン・アフターグッド、クリストファー・H・ワーナー、ハーヴェイ・ワインスタイン
音楽 ニック・ケイヴ、ウォーレン・エリス
撮影 ベン・リチャードソン
編集 ゲイリー・D・ローチ

 
配役
狩人コリー・ランバート – ジェレミー・レナー
FBIジェーン・バナー – エリザベス・オルセン
警察官ベン・ショーヨ – グラハム・グリーン
被害者ナタリー・ハンソン – ケルシー・アスビル
被害者の父マーティン・ハンソン – ギル・バーミンガム
妻ウィルマ・ランバート – ジュリア・ジョーンズ
チップ・ハンソン – マーティン・センスマイヤー
アニー・ハンソン – アルテア・サム
息子ケイシー・ランバート – テオ・ブリオネス
ダン・クロウハート – エイペザナクウェイト
アリス・クロウハート – タントゥー・カーディナル
被害者の恋人マット・レイバーン – ジョン・バーンサル
ピート・ミッケンズ – ジェームズ・ジョーダン
カーティス – ヒュー・ディロン
ディロン – マシュー・デル・ネグロ
カール – オースティン・グラント
エヴァン – イアン・ボーエン

 

ウィンド・リバー Wind River 2018 アカシア・エンタテ他製作 ワインスタイン配給 KADOKAWA国内配給

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