「イブの三つの顔」は、精神科医によって書かれた多重人格者クリス・コスナーの闘病記録に基づく、1957年のシネマスコープ映像による、ナナリー・ジョンソン監督の白黒ドラマ映画。

ジョアン・ウッドウォードはこの映画に主演したことにより、アカデミー主演女優賞を受賞した。

あらすじ

1951年、気の弱そうな主婦イヴ・ホワイトが夫に連れられ、ジョージア大学のルーサー医師を訪ねる。生活していて気が遠くなることがあり、頭痛がひどくなると言う。それは回復したのだが、一年後、再びイブ・ホワイトは夫と訪ねてくる。ホワイト夫人は派手な買い物もアタランタの旅も覚えがなかったのに、夫がでっち上げようとしていると感じていた。そこでルーサー医師はイヴ・ホワイト以外にイブ・ブラックと名乗る人格が共存していることを知る。

イブ・ブラックが出ているときに、娘ボニーを頸をしめて殺そうとする。ホワイト夫人はしばらく入院することになった。そこでも多重人格は毎日のように出たが、安定したと判断して、家に返す。夫ラルフが飛んで帰ってきて、ジャクソンヴィルまで連れて行こうとするが、ホワイト夫人は気が進まなかった。その時イブ・ブラックが現れて、ドレスを買ってくれなら言うこと聞くわと誘う。夫は早速、ドレスを買い与えるが、彼女はそれを着て他の男と踊りに行った。夫はそのことを許せず、とうとう夫人を離縁してしまう。

ルーサー医師はホワイト夫人もイブも人格として何か弱いと感じていた。ある日、ホワイト夫人は自殺未遂をする。ルーサーは催眠術をかけてみる。すると第3の人格、非常に落ち着き理性的な女性が現れた。さらにホワイト夫人が子供の時のトラウマを抱えているのではないかと考え、6歳まで記憶を遡ろうとすると軒下で遊んでいる記憶で途切れてしまう。さらにホワイト夫人、イブ、ジェーンに尋ねる。ジェーンがその後、亡くなった祖母の頬をキスした時に怯えて泣いたことを思い出す。
トラウマを思い出してから、ジェーンは過去を全て思い出した。そして彼女の影の部分だったホワイト夫人とイブは消えていた。

雑感

今は多重人格ではなく解離性同一症と呼ばれて、研究も進んでいるが、やはり幼児期のトラウマが原因であることが非常に多い。

日本未公開だが、以前は深夜テレビで何度も見ていた作品。しかし30年近い以前なので細かいところを忘れてしまった。最近、この映画をとんと見なくなった。
でもこの映画が多重人格映画の先駆けだった。同年にシャーリー・ジャクソン原作小説「鳥の巣」に基づいた、エレノア・パーカーが主演する多重人格に関する映画「Lizzie」が1957年4月に発表されたが、予算をかけすぎてコケてしまった。
一方、9月公開の「イブの三つの顔」は事実に基づいてセミ・ドキュメンタリー風にして、予算も抑えたために成功した。映画は約100万ドルの予算に対して収入150万ドルをあげる成績をあげた。

彼女のこの演技は高く評価されて、ポール・ニューマンと新婚だったジョアン・ウッドワードは、デボラ・カー、エリザベス・テイラー、ラナ・ターナーを相手に回してアカデミー主演女優賞に輝いた。授賞式では後方の席にいて、プレゼンターであるジョン・ウェインから名前が発表された瞬間に矢のように駆け下りて、壇上に上がり泣き出したシーンが有名。
確かに早変わりのように性格を切り替える演技はすごいと思う。

スタッフ

監督・製作・脚本 ナナリー・ジョンソン
原作 コルベット・シグペン、ハーヴィー・クラークリー「イブの三つの顔:多重人格の一例」
音楽  ロバート・エメット・ドーラン
撮影  スタンリー・コルテス

キャスト

イヴ・ホワイト(ブラック)、ジェーン: ジョアン・ウッドワード
イヴ(幼年期)  ミミ・ギブソン
ラルフ・ホワイト  デヴィッド・ウェイン
カーティス・ルカサー医師  リー・J・コッブ
フランシス・デイ医師  エドウィン・ジェローム
病院秘書  アリーナ・マレー
アール    ケン・スコット
ナレーター   アリステア・クック

 
イブの三つの顔 The Three Faces of Eve 1957 20世紀フォックス製作・配給

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