熊井啓江崎実生が共同脚本を書き、舛田利雄が監督した、浅草を舞台にした青春ミュージカル映画

主演は吉永小百合、坂本九、共演は浜田光夫、高橋英樹、渡辺トモコ。カラー映画。

あらすじ

叔母きくの経営する置き屋に住まわせてもらっているユキは、清水社長に水揚げされるのを嫌って逃げた。彼女は、叔母きくに頼まれた柳橋一家に追われたが、昔の同級生で吉野組のチンピラである三郎に助けられた。しかし、三郎の仲間、十二階、ちょうちん、ぽっぽは、内緒で彼女を売り飛ばそうと考えていた。ユキと三郎らは、柳橋一家に追われて、ストリップ劇場へ逃げ込む。そこにはやはり同級生だった九太がいた。彼はユキを匿うことを約束した。
ユキが九太と親しくするので、嫉妬した三郎は一人で、学生たちに因縁をつけて喧嘩を売りつける。多勢に無勢だったが、ボクシング練習帰りの英二が中に入って収めた。
英二は柳橋で芸者屋をしているきくを訪れた。英二は、実はユキの血のつながらない兄で、この家にかつて住んでいた。英二は、ユキの事件を聞くと、きくに対して怒って飛び出した。
きくの娘トモコも、ユキと同級生だったが、英二のことを愛していた。しかし、英二がユキを愛していることも知っていた。

翌日、吉野組長にユキのことがバレて、三郎の仲間たちが劇場にユキを探しに来た。九太はユキを鳩小屋の中に匿う。三郎は、組の兄貴分内海によってリンチに会う。九太は、ボクシング新人王戦を直前に控えた英二に助けを求める。
英二は、吉野組に行き、三郎を助け出すが、組幹部の武田に捕まり新人王戦で八百長をすればユキを見逃してやると言われる・・・。

 

雑感

B級映画のつもりで作ったのだろうが、今から考えると、スタッフは監督に舛田利雄、助監督に熊井啓、主演に吉永小百合、高橋英樹、坂本九ら豪華メンバーが揃っている。
吉永小百合は、特に可愛らしい。寝静まった劇場で彼女がパントマイムやダンスを踊って、坂本九が歌いまくる。

「あなたの胸の中でひとりぼっちの私、ひとりぼっちの僕、ひとりぼっちの二人」と歌うテーマソングは、作詞永六輔、作曲中村八大坂本九が歌う六八九ソングの一つ「一人ぼっちの二人」だ。非常に「上を向いて歩こう」に感じが似ている。
実際、1962年11月に「一人ぼっちの二人」を発売するが、13ヶ月前(1961年10月)に「上を向いて歩こう」が発売されていて、どちらも秋ソングだった。1963年にアメリカで「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」がビルボード一位になり、その後「一人ぼっちの二人」は省みられる事はなかった。

ちなみに歌謡映画「上を向いて歩こう」は、1962年3月に舛田利雄監督の元で、吉永小百合、坂本九、浜田光夫、高橋英樹、渡辺トモコのコンビで公開されている。映画自体は、あまり面白くなかったが、最後に全員でを合唱するシーンが印象深かった。

しかし、吉永小百合は、「上を向いて歩こう」でも共演した五人組で作った、ミュージカル色が強くなった映画「ひとりぼっちの二人だが」の方が好きだそうだ。女優なのだから、毛色が違う映画の方がやっていて面白いのは当然だろう。

 

スタッフ

企画  水の江瀧子
脚本  熊井啓、江崎実生
監督  舛田利雄
撮影  横山実
音楽  中村八大
作詞  永六輔
主題歌 坂本九「一人ぼっちの二人」

キャスト

田島英二  高橋英樹
田島ユキ  吉永小百合
杉山三郎  浜田光夫
浅草九太  坂本九
岩下トモコ  渡辺トモコ
岩下きく  楠田薫
吉野  松本染升
武田  内田良平
内海  小池朝雄
十二階  市村博
ちょうちん  杉山俊夫
ぽっぽ  武藤章生
カンノン  柳瀬志郎
ほほづき  亀山靖博
竜  木下雅弘
佐藤刑事  高品格

 

***

いよいよ試合が始まった。武田、内海が観戦している。視線が気になって英二は、受け身に立った。ユキを愛する九太は、三郎とユキに苦渋の提案をする。「二人は、北海道に逃げて仲良く暮らせ」。英二もそう聞かされて、心配事もなくなったので、KO勝ちした。
会場の裏に武田と内海が、英二、ユキ、三郎、九太たちを待っていた。チンピラは、英二の敵ではなく、内海は刃物を取り出した。その時、顔見知りの佐藤刑事が来て、武田と内海は逮捕された。叔母きくも、トモコに諭されてユキに詫びた。夜空に九太の歌声が響いた。

 

 

ひとりぼっちの二人だが 1962.11 日活製作・配給 吉永小百合主演映画

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