「細雪」「若草物語」など洋の東西を問わず四姉妹ものは映画になりやすいのだろう。
佐伯清監督もプログラムピクチャーとしてこの「浅草四人姉妹」を撮影した。
佐伯監督は実はこの前年に新東宝を退社して東映に移っているため、最終編集は製作者任せだったんだろう。今では音声も不鮮明だし、話の内容が飛んでしまってわかりにくい。

 

あらすじ

浅草の小料理屋を経営する藤吉と梅子の間には四姉妹がいた。長女美佐子はお姉ちゃん先生と呼ばれる内科医、次女幸子は踊りを看板にしている芸者、三女千枝子はデザイナー志望、四女恵美子は代議士になりたいという女子高生だ。
そんな四人に見合い話が舞い込む。慶応大経済学部卒というその男はどうも四姉妹のうち誰でも良いようである。彼は名を伏せてまず長女の病院に診察で訪れる。ついで次女の座敷に現れる。
一方、三女千枝子は盲腸になって出会った外科の田中先生に一目惚れしてしまう。見合い相手が彼女のあとをストーカー並みに付けるため、田中先生と親密なところを見せつけて追い返したが、田中先生も千枝子を憎からず思うようになった。二人は早速結婚を決めてしまう。ところが長女美佐子はその話を複雑な表情で受け止めた。彼女もずっと田中先生を好きだったが言い出せなかったのだ。一方、次女幸子が愛する人は妻子があって病気で入院してしまった。お見舞いにも行かせてもらえない。そのうちに男はなくなってしまう。
やがて踊りの発表会があり、幸子は「八百屋お七」を熱演していた。それを見てから飲み屋で一人酒をあおる美佐子だが、急患の連絡があり、患者の元へ急いぐのだった。(白黒映画)

雑感

内容的には、「若草物語」的だ。低予算の割にしっかりした脚本だった。一番縁づきそうな相馬千恵子が行かず後家になりそうだとは皮肉なものだ。

しかし演技は、急ぎで撮影したのが丸わかり。忙しい主役級はリハーサルをろくにしていないから、台詞は棒読みだ。家族で一番マシな演技を見せるのはベテランの父三島雅夫、母沢村貞子でもなく長女相馬千恵子、次女関千恵子、三女杉葉子でもなく当時20歳になったばかりの初々しい四女岩崎加根子なのだ。俳優座が生んだ三大女優の一人(あとの二人は渡辺美佐子、市原悦子)だから、さもありなんだ。

高島忠夫久保菜穂子がニューフェイスとして出てくる。高島は末娘岩崎加根子と良い雰囲気の板前見習、久保は相馬千恵子の勤める病院の看護婦見習いでコミカルな動作が印象的。ニューフェイスの端役の方が演技に打ち込んでいるのがよくわかる。

 

スタッフ・キャスト

監督 佐伯清
脚本 井手俊郎 、 橋村美保
製作 坂上静翁

配役
相馬千恵子
関千恵子
杉葉子
岩崎加根子
三島雅夫
沢村貞子
高島忠夫
井上大助
飯田蝶子
二本柳寛
山内明
田中春男
久保菜穂子

 

 

浅草四人姉妹 1952 新東宝製作・配給

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