時代も変わったものだ。江戸川乱歩といえば推理小説家の第一人者だったが、変態殺人事件を扱った作品が多いのでNHKは放送を今まで避けていると思っていた。(一度夏木陽介で連続ドラマを作ったが、原作を顴骨堕胎していた)
しかし新年早々に初期短編の三作品をドラマ化してきた。しかも主演の明智小五郎役には変化球を使って女性の満島ひかりを起用している。
1月11日放送の「D坂の殺人事件」は明智小五郎が最初に登場する事件で、まだ明智が職業探偵でなく単なる高等遊民だった時代の事件だ。

語り手は「」という無職の素人探偵である。いつも行く喫茶店から古書店が見える。古書店には女房がいるが身体中キズだらけという噂だ。友人の明智は彼女と幼馴染という。
今日も明智と話しながら古書店の方を気にかけていた。誰かいたはずなのだが、今は客も店番もいない。不審に思い明智と二人で店に入ると女房は奥で絞殺されていた。店の表からは二人が監視していたし、裏からも証人がいて出入りした人間はいない。これは密室殺人なのだろうか。

構成は原作に忠実なためわかりやすい。演出的にはモブをミニチュア人形にやらせている。また犯行現場のミニチュア模型も作っており、犯人の行動が一目で分かる仕組みである。(実相寺昭雄監督と同じ手法)これはコストパフォーマンスの観点からも安上がりな方法だ。
明智は原作通り男性という設定なのだが、途中から男装の満島ひかりが演じていることにも違和感を感じなくなった。

 

演出:宇野丈良

配役
私:松永天馬
明智小五郎:満島ひかり
古本屋の女房:中村中
古本屋:山中崇
蕎麦屋:津田寛治
小林刑事:末吉くん

D坂の殺人事件 2016 江戸川乱歩短編集 NHKBS

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