木下恵介が脚本・監督を担当したホーム・コメディ
主演は、佐田啓二、高峰秀子の「喜びも悲しみも幾歳月」コンビ。共演は田村秋子、南原伸二、有沢正子
白黒映画。

あらすじ

幸平少年は、田舎から家出して東京へやって来た。これからどうすればいいかわからず、新宿駅前広場でボーッと立っていると、不良少年たちに脅されて連れて行かれる。不良少年は、東京郊外の一軒家、佐藤家に強盗に入るため、偵察役に幸平を利用する。

その佐藤家の未亡人佐藤てつは、貪欲な女で嫌われ者だ。お金を貯め込んでいると言う噂で、いつも金回りに困っている、先妻の息子金重と百合子夫婦は頭が上がらない。
その日、彼は会社から家に飛んで帰ってくる。新聞に懸賞品一等、五万円のカメラに当選したことが、彼が名前入りで報道されたのを百合子に伝えにきたのである。てつは、幸いまだ気づいていないようだ。

下宿人美代子は喫茶店のウェイトレスで、北村と言う学生と付き合っている。しかし美代子は、畳をアイロンで焦してしまい、てつから部屋を追い出される。
自分の夫の稼ぎが少なくて生活苦の、百合子の妹さくらは、金重の当選を知り、無心しようとやってきた。これを良いことに、百合子はさくらに溜まっていた洗濯をさせる。
さらに末妹あやめも現れた。百合子から美代子の部屋が空いたのを聞いて、彼氏の大学生鈴木を後釜に推薦するためだ。

久しぶりに、てつの甥・赤間も訪ねてきた。彼は、一晩泊まらせて欲しいというが、魂胆は別にあった。実は、彼の応召中に戦災で父母を亡くし、知らぬ間にてつは彼の父母の家を自分のものにしてしまったのだ。復員以来、彼は身をやつし悪の道に進んでいた・・・。

雑感

大ヒットした前作「喜びも悲しみも幾歳月」で誠実な夫婦を演じた高峰秀子・佐田啓二コンビが、今度は金に飢えた夫婦を演じる。木下恵介監督が、役者のイメージが固定しないように配慮した。

田村秋子は、好演だった。彼女は、昔の良いお母さんの役のイメージが強い。彼女が演じている「てつ」は、養子夫婦に面倒を見てもらうため、小金持ちの振りをしなければいけなかった。昔は、田舎の小金持ちと言うだけで、強盗に襲われる時代だった。

有沢正子の雰囲気が、前作と変わっていた。相変わらず高峰秀子にそっくりな面影なのだが、都会っ子風で華やかなメイクだった。

スタッフ

製作  桑田良太郎
脚本、監督  木下惠介
撮影  楠田浩之
音楽  木下忠司

 

キャスト

佐藤百合子  高峰秀子
佐藤てつ(義母)  田村秋子
佐藤金重(夫)  佐田啓二
佐藤和夫(息子)  五月女殊久
さくら(妹)  小林トシ子
あやめ(末妹)  有沢正子
赤間文一(夫の幼馴染)  南原伸二
新太郎  小野良
小川美代子(元下宿人)  伊藤弘子
北村  里見孝二
不良少年A  小瀬朗
不良少年B  佐山彰二
幸平  田中晋二

***

外では不良少年が、佐藤邸への人の出入りの多いことに呆れ果てた。幸平も、何度も様子を伺ったが、その度に来訪者が増えている。

美代子が帰ってきて、あと一日分家賃を払っているから、部屋は私のものと譲らない。あやめが目を離したすきに、鈴木と美代子は仲良くなってしまう。そこへ北村がやって来たおかげで鈴木と取っ組み合いの喧嘩になる。見るに見かねて、赤間が止めに入り、二人とも柔道技で押さえ込まれてしまう。

さくらは、百合子がてつの戸棚に入れた二十円をとり、百合子と喧嘩して帰った。そのことで百合子はてつにも叱られる。

赤間が正体を現し、てつの財産を奪おうとした。しかし、てつの貯金はわずかなものだった。赤間のピストルを、金重の息子が暴発させ、張り込んでいた警官が急襲し、赤間を逮捕した。
夜になって、東京が恐ろしくなった幸平は、新宿の交番に出頭して家出したことを告白した。

風前の灯 1957 松竹大船製作 松竹配給 高峰秀子主演ホームコメディ

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