松竹のお笑い担当前田陽一監督が、ザ・ジャガーズ中村晃子を主演に起用してサイケデリック・コメディ(ドタバタ・ナンセンス)映画を撮っている。
脚本は筆名を使っているが小林信彦であり、音楽はいずみたく

本当はザ・スパイダーズを起用したかったらしいが、東宝と日活に抑えられていて、代わりにジャガーズを起用したそうだ。
岡本信のいたジャガーズは格好良かったし、歌謡曲をベースにしたGSを歌っているのが気に入っていた。
でも地味過ぎてヒットが続かず、残念ながら最終的にメンバーがバラバラになって解散してしまう。

 

個人的には中村晃子の大々ファンだった。「虹色の湖」もヘビーローテーションするほど嵌まってしまった。今でも空で歌える。中村晃子はツイッギーの来日時に横に並ぶほど、小顔でかっ飛んでるんだけれど、同じ松竹の加賀まりこと比べて庶民的なところが可愛かった。

だからこの映画自身が好きなのだ。サイケデリックというより、スラップスティックだが、カルトかと思うと、何気なく当時の若者に日本戦後史を説くあたりも好きだ。

 

ほかに、てんぷくトリオが全編にわたって出演している。三波伸介はもちろんだが、早くして亡くなった大ボケ役の戸塚睦夫が絶好調だ。またボケ役の伊東四朗だけが悪役ではなく、ジャガーズのマネージャーとなる。50年後の今日を見据えて配役されたようだった。

先代三遊亭圓楽師匠もナルシスト警部の役で少し出演している。星の王子さまキャラで売り出していた頃だ。

ゲスト出演の泉アキ青山ミチさらに松竹アイドル映画の女王尾崎奈々さまに加え、松竹パンチガールズの一員として藤田憲子(貴乃花親方の母)まで出てくる。

今さらだが、カルト映画ファン垂涎の作品である。

 

Synopsis:

まず僧侶(大泉滉)が日本への帰国便に乗っていると、スチュワーデスがお酒を継いでくる。そのスチュワーデスがドラマ「お嫁さん」主演の東山明美である。1カットのみのゲスト出演だった。
宗教上の重要な資産ということで僧侶は無事入関を済ませるが、実はそれは金の密輸品であった。彼らは密輸団の一味だったのだ。本部からホテル・エンパイヤでブツの引き渡しを行えと指令を受ける。
一方、横浜ドリームランドにあった、五重塔と言われたホテル・エンパイヤのベランダで、ジャガーズがコンサートを開いている。GSの割りに観客数は寂しいものだったが、何故かかなり上の階のベランダで青山ミチ本人が踊っている。台詞なしの2カットでやはりゲスト出演だ。

この後、ジャガーズのボーカルの岡本信が密輸品の受け取り相手と間違えられる。そこへ入って来たのが、てんぷくトリオである。三波伸介戸塚睦夫は密輸品の受取り役で、伊東四朗は善良なるホテルのボーイ。三波と戸塚は、悪事を見られた岡本と伊東の追い掛け回して命を付け狙う。
実は密輸団はこの年日本に返還されたばかりの硫黄島に本部を作っていて、金塊の力で世界征服を狙う鬼頭(内田朝雄、当初は三島由紀夫にオファーしたが断られた)が遠隔命令を下していた。

岡本と伊東は友人のアキ(中村晃子)がやっている喫茶店に隠れていた。伊東は失業したため、ジャガーズのマネージャーになっている。
再びジャガーズは横浜ドリームランドで営業する。ところが客が全然来ない。実は鬼頭の陰謀で、人気のないライブ会場に爆弾を仕掛けて、ジャガーズを抹殺するつもりだった。実行部隊がとんまな三波と戸塚だったので、ジャガーズにまんまと逃げられてしまう。

岡本とリーダー宮が晃子に相談すると、知人の警部を紹介してくれる。それが「星の王子さま」で売り出し中の先代三遊亭圓楽だった。圓楽警部は、岡本が麻薬をやって妄想を見たのだろうと言う。
一方、鬼頭の密輸団はパンチガールズ五人娘をジャガーズの刺客として送り込む。東京サマーランドでジャガーズとパンチガールズが遊んでいるバックでは、何故か泉アキがビキニで歌っている。パンチガールズの登場にすっかり鼻の下を伸ばしたメンバーだったが、晃子は嫉妬で大波発生スイッチを押して、五人娘を流してしまう。
岡本はあの事件以来すっかり塞ぎ込んで、歌えなくなる。ゴーゴー喫茶のライブでは晃子が代役で「虹色の湖」を歌っている。ふと岡本は美しい女性を描いた絵画を見て心を奪われる。それを見ていると、無性に雪山へ行きたくなる。
一行は大町温泉スキー場へライブツアーを兼ねて行くが、密輸団の三波伸介、戸塚睦夫、パンチガールズも密かに貸切バスで跡をつける。
岡本はお客の中に絵のモデルの女性がいるのを見つける。それが雪子(尾崎奈々)であった。二人は会った途端に惹かれるものを感じる。しかし雪子は、鬼頭の実の娘だった。
翌日、スキー場のデートで雪子は岡本に別れを切り出す。ところがパンチガールズに伝達が上手くいってなかったのか二人を襲撃してしまう。しかも射殺されたのは雪子の方だった。パンチガールズは全員、三波と戸塚によって粛清される。

怒ったジャガーズと晃子は、敵の本拠地、硫黄島に乗り込み密輸団と対決する。島には旧日本兵の橘がまだ戦争が続いていると勘違いして隠れていた。橘に日本の現状を伝えて、日本人のくせに密輸を行っている鬼頭を倒すべきだと説明して、協力を取り付ける。橘はお国のためだと信じて、敵本部を爆破するが銃で撃たれて死ぬ。鬼頭も全て終わったと知り、ダイナマイト自殺を遂げる。最後は、橘の希望通り、硫黄島の摺鉢山に全員で日の丸を掲げる。クリント・イーストウッド監督の映画「父親たちの星条旗」のシーンのように。

 

Impression:

ボーカル岡本信は当時からイケメンだと思ったが、1980年代のGSリバイバルブームで復活し、さらに良い男になっていた。岡本健一から錦戸亮につながる顔の系譜だが、ジャニーズ所属ではない。
ジャガーズとしてではなく、単独でも懐メロ番組に出演していたため、まさか50代の若さで亡くなるとは思わなかった。本当に残念だ。

 

中村晃子はもともと松竹の女優としてデビューして、初めは田村正和、継いで安藤昇と組んでお色気路線で売り出した。それが1968年の出したGS歌謡曲「虹色の湖」が大ヒットして、映画でなく音楽でブレイクした。この映画は、ちょうどその頃だ。
翌年には「殿~」とドラマ「かわいい魔女ジニー」の主演バーバラ・イーデンの声を当てて、さらに人気上昇。同年には紅白歌合戦にも出場している。

 

 

当時の先代三遊亭圓楽は正直言って面白くなかった。だから「星の王子さま」というキャラ付けをしていた。青山学院大卒を笠に着る当代の三遊亭圓楽とキャラ付けで共通点を感じる。
「笑点」では桂歌丸と三遊亭小円遊の喧嘩を見ているのが好きだった。

 

東京から硫黄島へ地図上で線分を描きそれを二倍に延長した地点にグァム島がある。ちなみに1972年、グァムで旧日本兵横井庄一さんが発見される。この映画の4年後である。

 

この映画はカルト作品扱いされているが、ザ・ジャガーズ中村晃子てんぷくトリオのファンの人ならば、文句なく楽しめる作品である。

 

 

Staff/Cast:

監督 前田陽一
製作 島田昭彦
脚本 中原弓彦(小林信彦) 、 前田陽一
撮影 竹村博
音楽 いずみたく

 

 

 

 

出演

中村晃子 アキ
ザ・ジャガーズ 岡本信  本人役
ザ・ジャガーズ 宮ユキオ 本人役
ザ・ジャガーズ 沖津ひさゆき 本人役
ザ・ジャガーズ 宮崎こういち 本人役
ザ・ジャガーズ 佐藤安治 本人役
ザ・ジャガーズ 森田巳木夫 本人役
尾崎奈々 雪子
てんぷくトリオ伊東四朗 伊東
てんぷくトリオ三波伸介 西郷
てんぷくトリオ戸塚睦夫 東郷
内田朝雄 鬼頭
先代三遊亭円楽 自称超二枚目の警部
南道郎 橘軍曹
藤田憲子 女殺し屋ホワイト
大泉滉 金塊運び屋B
穂積隆信 税関吏
レイコ・ ミツコ スナックの女エミ・マリ
泉アキ 本人役
東山明美 スチュワーデス
青山ミチ 或る女

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