東映三度目の「忠臣蔵」映画化。一度目と同様に大佛次郎原作「赤穂浪士」を基にして、さらに群像劇の様相を強く打ち出した、意欲的な作品。
監督は東映忠臣蔵三度目の松田定次、脚本は黒澤明組の小国英雄
主演は片岡千恵蔵、市川右太衛門

 

あらすじ

五代将軍綱吉の治政、江戸市内に立てられた高札の「賄賂は厳禁のこと」の項が消されていた。容疑者の浪人堀田隼人は、目明しに追われるが、堀部安兵衛に救われる。
赤穂藩浅野内匠頭は、勅使饗応役を命ぜられた。指南役の吉良上野介は、内匠頭が賄賂を贈らないので意地悪な仕打をした。しかし畳表替え事件は堀部安兵衛の浪人時代の顔の広さで畳職人を集めることができて事なきを得た。
脇坂淡路守が浅野の気苦労を労いに訪れ、酒を飲み交わす。
しかし勅使登城の日、吉良に装束として長裃を着るように浅野は言われるが、当日登城してみると、全員が烏帽子大紋を着ていたため、ブチ切れてしまい松の廊下で吉良に刃傷に及び、柳沢吉保の怒りを買い即日切腹を命じられた。一方、吉良はお咎め無しである。
赤穂藩は、城代家老大石内蔵助を中心に総勢六十余名が殉死と決したらしい。上野介の息子上杉綱憲の家老千坂兵部は、片手おちな幕府の処分を聞いて心痛した。兵部と内蔵助は山賀流兵法指南の下での親友であった。兵部は腕ききの浪人者を集め、上野介の身辺を守らせた。堀田隼人もその一人となり、お仙と共に大石らの動静をさぐることが命じられる。大石は残った同志に仇討ちの意志を打開け、赤穂城を脇坂淡路守に明渡した。
(ここまで2時間半の内、1時間半経過)

大石は京都山科に居を構え、祇園で遊蕩の日々を送った。妻子も離別した。ただ一人兵部だけは大石の心中を知っていた。大石は立花左近と名乗り、東下りした。三島の宿で本物の左近とばったり出会うが、恩情で事なきをえた。大石は討入りを決意し、瑶泉院を訪れ言外に別れを告げる。元禄十四年十二月十四日、本所松坂町の吉良邸に討入った大石ら四十七士は吉良を討つ。赤穂浪士たちを見送る人々の中に、兵部の姿があった。「やがてわしも死ぬ、大石とあの世で会うのが楽しみだ」とつぶやいた。

 

雑感

前半は群像劇のような形式で浅野内匠頭(大川橋蔵)、脇坂淡路守(中村錦之助)、堀田隼人(大友柳太郎)、千坂兵部(市川右太衛門)と順番に顔を見せ、最後に主役大石内蔵助(片岡千恵蔵)が出てくる。
後半はまず立花右近(大河内傳次郎)との出会いを主に描くが、その後に千坂兵部との言葉なき再会のシーンがあり、市川右太衛門の後半の見せ場も作っている。そしてあっさり瑞泉院との出会いを済ませて(戸田局は出ず)、討ち入りだ。後半は大石内蔵助を中心に描いているが、表に感情を吐き出すよりうちに感情を溜めているようだった。

 

実際は千坂兵部は人情松の廊下の二年前に亡くなっており、色部又兵衛が米沢藩の家老だった。そのため近年千坂兵部が登場することは少なくなった。

 

映画各社は何回も忠臣蔵を昭和三十年代に描いたが、それはカラー映画に相応しいオールスターキャストであり、戦争に負けてアメリカに臣従している悔しさを当時の人たちは強く感じていたからであろう。

 

薄田研二が三度目の堀部弥兵衛を演じている。どの回も確実に台詞量があり、近代新劇界で重鎮であったことがよく分かる。

 

スタッフ・キャスト

監督 松田定次
製作 大川博
原作 大佛次郎
脚色 小国英雄
企画 坪井与 、 辻野公晴 、 玉木潤一郎 、 坂巻辰男
撮影 川崎新太郎
音楽 富永三郎

配役

大石内蔵助 片岡千恵蔵
脇坂淡路守 萬屋錦之介
堀部安兵衛 東千代之介
浅野内匠頭 大川橋蔵
丘さとみ
お咲 桜町弘子
桜   花園ひろみ
北の方(瑶泉院) 大川恵子
伝吉 中村嘉葎雄
大石主税 松方弘樹
上杉綱憲 里見浩太朗
千代  長谷川裕見子
おりく  花柳小菊
楓   青山京子
浮橋太夫  千原しのぶ
およね  木暮実千代
立花左近  大河内傳次郎
清水一角   近衛十四郎
片岡源五右衛門  山形勲
堀部弥兵衛   薄田研二
多門伝八郎 進藤英太郎
吉良上野介 月形龍之介
堀田隼人 大友柳太朗
干坂兵部 市川右太衛門
柳沢出羽守 柳永二郎

松造 堺駿二
金助 田中春男
左吉(蜘蛛の陣十郎) 多々良純
猿橋右門 徳大寺伸
松前伊豆守 香川良介
伊達左京亮 片岡栄二郎
小野寺十内 沢村宗之助
小林平八郎 戸上城太郎
片田勇之進 阿部九洲男
赤垣源蔵 加賀邦男

赤穂浪士 1961 東映 東映創立十周年記念映画 大佛次郎原作

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