井伏鱒二の原作を、川島雄三藤本義一が共同脚色し、川島雄三が監督した大阪下宿コメディ。撮影は岡崎宏三。主演はフランキー堺、淡島千景で共演は一癖ある豪華俳優陣。

 

 

あらすじ

 
与田五郎は小説、論文、翻訳の代筆屋から何でも屋までやるが、男子一生の仕事が見つからぬ。屋敷の持主は耳の遠い御隠居さん。古物商の宝珍堂は精力剤のゼリーをへその回りに塗っているが、それでは飽き足らぬ若い女房は五郎に気がある様子。お千代は結婚費用を稼ぐため、旦那三人を取っていたが、嫁に行くことが決まったため三人と正式なお別れ式を挙げた。ところが縁談が破談になり姿を消す。隣の洋吉は嫁に行くお千代の送別会を主催する。西原は下着泥棒で刑事に追われている。ガサ入れに来た際ヤスヨの下着が見つかり、彼女の部屋に出向くと密売酒が見つかり警察に逮捕される。賄いを引受けているのがおミノ婆さんだが、もらったテレビを下宿人に観せて銭を取る。彼に恋心を抱く陶芸家津山ユミ子が下宿に引っ越してきた。仕方なく洋吉は貸間ありの看板を外す。
しかし五郎は自分に自信がなく、ユミ子の求愛を断って怒らせる。さらに老けた学生江藤に騙され、福岡で大学受験の替玉をやらされるが親友の教授に見つかってしまう。しかし親友の実家が別府で旅館を経営していたので、心機一転その旅館の番頭としてやり直す気になる。
しかし五郎は心配してユミ子を焚き付けて別府へ探しに行かせる。五郎は鹿児島へ逃れるが、ユミ子に捕まるのは時間の問題だ。

 

 

雑感

 
宝塚映画撮影所で作られた、大阪を舞台にして、人間の品性という仮面を捨てた喜劇である。井伏鱒二の原作では荻窪のアパートが舞台になっているが、大阪の方が適している。
川島雄三監督は、監督になった頃からALS(筋萎縮性側索硬化症)を患っていたため、多分にニヒリストである。この映画でも五郎の煮えきらなさは川島監督の人生観の現れだ。川島監督は愛人に孕ませたことがあるが、結婚を選ばず堕胎させた。
 

 

スタッフ・キャスト

 
監督 川島雄三
製作 滝村和男
原作 井伏鱒二
脚色 川島雄三 、 藤本義一
撮影 岡崎宏三
音楽 真鍋理一郎
 
配役
与田五郎 フランキー堺
津山ユミ子 淡島千景
洋吉 桂小金治
お千代 乙羽信子
おミノ 浪花千栄子
宝珍堂 渡辺篤
教子 市原悦子
ヤスヨ 清川虹子
熊田 山茶花究
西原 藤木悠
浪人江藤 小沢昭一
御隠居 沢村いき雄
保険屋野々宮  益田喜頓

 

貸間あり 1959 東宝宝塚 川島雄三監督作品

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