1911年に書かれたフランシス・ホジソン・バーネット(「小公子」「小公女」)の児童小説、その2回目の映画化である(1回目はサイレント映画で1919年製作)。
MGM映画で、ロバート・アードレーが脚色しフレッド・M・ウィルコックスが監督した。

インドで生まれ育ち、両親をコレラで亡くした少女が、英国ヨークシャーに連れて行かれる。そこで叔父と出会うが、彼は事故で亡くした妻を愛するが余り、我が子と思い出の庭園を封印していた。ところが少女は、強烈な個性で根暗な叔父と従兄の生活をかき乱し始める。

主演はマーガレット・オブライエン
共演はハーバート・マーシャルディーン・ストックウェルエルサ・ランチェスター
パートカラー映画。

あらすじ

少女メアリーはインドの裕福な家庭に生まれ甘やかされたので癇癪持ちになってしまった。ある年、コレラ禍で両親を同時に失い、冬の英国ヨークシャーに送られた。
義理の叔父クレイヴン氏と、足が不自由な従兄コリンが、叔母を亡くして以来、荒野の邸宅で他人を拒絶して暮らしていた。クレイヴン氏はしょっちゅう旅をしていて、息子のことを放ったらかしにしていた。十歳のコリンは、「僕は若くして死ぬ」と、いつも言っている。
新生活に希望を少しでも抱いていたメアリーは、陰鬱な家庭にがっかりする。
メアリーに初めて友人ディコンができる。ディコンは、メアリー付きの女中マーサの弟で、姉同様に朗らかな少年であり、メアリーの我儘にも決して怒らない。彼は庭師見習いだが、庭師のベンから「蔓草が絡み合った壁の向こうに子供しか見えない秘密の花園があって、その扉を開く鍵がどこかに隠されている」という話を聞いた。メアリーはそれを聞いて、秘密の花園探しに夢中になる。
ある日、メアリーは、庭に住むカラスが鍵を土の中から掘り出しているところを見つける。早速、ディコンと秘密の花園への扉を探す。間もなく、扉は見つかり、鍵を差し込んで回すと扉は開いた。
そこは、長年に渡って放置されていた庭園だった。ティーセットと二組の机、椅子が捨てられていた。そこで叔父夫婦がお茶を飲んでいた時、大きな枝が折れて叔母に当たりそれが元で亡くなったらしい。
しかしライラックやバラ、黄水仙たちが生き残っており、春になると見事な花を咲かせるはずだ。それを聞いたメアリーは、この庭園の存在を二人だけの秘密にしておこうとディコンと約束した。そして、翌日から秘かに二人で雑草を抜いたり、タネを蒔き出した。

春になろうとする日、コリンが癇癪を起こし、女中頭メドロック夫人の手に追えなくなった。そこへ大胆にも同じ年頃のメアリーが、乗り込む。何と英国の上流階級では考えられない癇癪合戦をコリンと二人でやり始めたのだ。
それがきっかけで、コリンとメアリーは仲良くなる。その後、コリンの部屋にメアリーとディコンが訪れ、コリンにも庭園の秘密を教えてあげる。

コリンは召使いを下がらせて、その間に車椅子に乗りメアリーとディコンに秘密の花園に連れて行ってもらう。そこはすでに春の装いを見せていた。素晴らしい母の花園を見て、コリンは「僕は長生きするよ」と呟いた。
ロンドンでは、コリンを診察したフォーテスキュー医師がクレイヴン氏を訪ねる。そこでフォーテスキュー医師は、「コリンはどこも悪くない。子供と会いなさい」と告げる・・・。

 

雑感

原作自体は、「ジェーン・エア」のようなゴシック・ホラー風味を持つ。それは導入であって終わってみれば、ハッピーエンドの児童小説だ。

映画を見てみると、素晴らしい作品だ。残念ながら戦後日本では劇場公開されなかったようだ。
オープニング・クレジットは、撮影について何も書いていないし、始まりのシーンはモノクロである。だから白黒映画だと思って見ていると、半分を過ぎてから、コリンを初めて秘密の花園に連れて行くシーンで、度肝を抜かれる。次のシーンが、テクニカラーだからだ。それにより、子供が自然と触れ合い本来の姿を取り戻したのを表現しているのだ。その庭園にいると、メアリーもコリンも癇癪を起こし方を忘れてしまい、人生を楽しもうと思ってしまう。
2回目のテクニカラーは、夏が過ぎた秘密の花園にコリンが寛いでいるシーン。しかしベンがやって来て、父が帰ってきたことを知らせる。
そして3回目のテクニカラーはラストシーンで、秘密の花園で三人組が遊んでいるところにクレイヴン氏が10年ぶりに訪れる。
1939年のミュージカル映画「オズの魔法使い」でもこの種のパートカラーは使われているが、3シーケンスだけをテクニカラーにした「秘密の花園」の方がより効果的である。

マーガレット・オブライエンは、シャーリー・テンプルが子役として活躍していた1937年生まれ。マーガレットも1942年から映画界で活躍した子役スターである。連続テレビドラマ「大草原の小さな家」のローラ役メリッサ・ギルバートに少し似ている。1944年にはジュディ・ガーランド主演ミュージカル「若草の頃」でアカデミー子役賞を受賞する。1949年にはジューン・アリスン主演の「若草物語」と「秘密の花園」に出演している。1951年にハリウッドから離れてテレビ界で活躍した。また、1952年、来日して大映映画「二人の瞳」で日本の子役スター美空ひばり(マーガレットと同じ年令)と共演した。

この映画でも演技は実にうまかった。初めは我儘な子供なのだが、ヨークシャーでコリンと会ってから、自分のやってることが馬鹿馬鹿しくなる辺りの変化は、非常に自然だった。

ディーン・ストックウェルは、1936年生まれで1940年代後半の名子役だった。それからも俳優を続けていたが、40年経ってから1980年代、ヴィム・ヴェンダース監督「パリ・テキサス」、デビッド・リンチ監督「ブルー・ベルベット」など怪作映画に続け様に重要な役で登場して話題になった。
この映画では、マーガレット・オブライエンとの掛け合いシーンが面白い。二人で話し合って、演技を作り出したのだろうか。

叔父役ハーバート・マーシャルは、1930年代からの名優だ。「極楽特急」や「海外特派員」「偽りの花園」などで主演して、よく見た顔だから、覚えているだろう。

マーサ役のエルザ・ランチェスターも脇役でよく見る顔だ。「メアリー・ポピンズ」にも出ていた。ダンサー出身で、イサドラ・ダンカンの弟子らしい。

配給会社ロウズ・インクは、MGMの当時の親会社である。

スタッフ

監督  フレッド・M・ウィルコックス
製作  クラレンス・ブラウン 
脚本  ロバート・アードレー
原作  フランシス・ホッジソン・バーネット 「秘密の花園」1911年英国刊
音楽  ブラニスロー・ケイパー(作曲)、アンドレ・プレヴィン(指揮、音楽監督)
撮影  レイ・ジューン

キャスト

マーガレット・オブライエン  メアリー・レノックス
ハーバート・マーシャル  叔母の夫アーチボルド・クレイヴン
ディーン・ストックウェル  従兄コリン・クレイヴン
ブライアン・ロウパー  女中の弟ディコン
グラディス・クーパー  女中頭メドロック夫人
エルサ・ランチェスター  女中マーサ
レジナルド・オーエン  庭師ベン・ウェザースタッフ
イソベル・エルソム  家庭教師兼看護婦
オーブリー・メイザー  田舎のグリドルストーン医師
ジョージ・ズッコ  ロンドンのフォーテスキュー医師

 

ネタばれ

クレイヴン氏は、ヨークシャーの荒野に再び帰ってくる。ディコンは、クレイヴン氏が誰かこの庭園に入ったら、全てを破壊すると言っていたことを庭師ベンから聞かされる。夜だったが急いでコリンとメアリーにそのことを知らせる。
その時、コリンの部屋にクレイヴン氏が現れる。ディコンとメアリーは慌てて隠れる。
クレイヴン氏は、コリンに「今まで父らしいことを何一つできなかったが、一緒にイタリアを旅しよう、そしてこの屋敷は庭ごと売り出す」と言い出す。それに対してコリンは反対したが、父は「出発は数日後だ」と言い残し、出て行く。

翌日、ロンドンから不動産屋がやって来て、屋敷や庭を一通り見た。商談成立かと思ったが、不動産屋が「素晴らしいお庭ですね」と言った。うちには、綺麗な庭などないはずだと言おうとしたクレイヴン氏は、ふとステッキを持って妻の庭園に入っていった。
そこではコリンとメアリー、ディコンが美しい花に囲まれて遊んでいたのだ。コリンは庭を売らないでと言って、車椅子から立って、一歩ずつ歩き始めた。それを見たクレイヴン氏は、奇蹟が起きたと思った。その瞬間、クレイヴン氏は憑きものが落ちたような笑顔でコリンを抱きしめた。不動産屋は、その様子を見て笑顔で、せっかく書いた小切手を破った。

 

 

 

 

秘密の花園 The Secret Garden 1949 MGM製作 ロウズ・インク配給 マーガレット・オブライエン主演

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