「源氏九郎颯爽記 濡れ髪二刀流」の続篇で、雑誌に連載された柴田錬三郎の原作小説を、前作担当の加藤泰が脚色も担当して監督している。
主演は中村錦之助、共演は大川恵子丘さとみ河野秋武柳永二郎。変わったところではファッション・モデルのヘレン・ヒギンスが英国娘として加わる。東映スコープでカラー映画

あらすじ

幕末、諸外国に向けて開港した兵庫港にやって来た源氏九郎は小島へ行き、先祖源義経の財宝を見つける。それは意外なものだった・・・。
公家の今出川兼親さらに浪人たちが名を挙げんとして英国人マリーに斬りかかったところに源氏九郎は通りかかる。九郎はマリーを救いだすが、兼親の一味には幼馴染で兼親の許嫁である志津子がいた。
九郎は、この事件で奉行所の兵庫勤番所与力富田と同心幸田と知り合いになり、幸田の同心長屋に泊めてもらう。兼親、志津子は尊皇攘夷を求める浪人犬山と知り合う。その背後には密貿易で悪どい金儲けをしている播州屋と用心棒新海がいた。
幸田の恋人お鈴が借金50両の形に売られると聞いて、九郎は先祖伝来の厨子を売って金を作ってやる。それを知った播州屋は、九郎を懐柔し先祖伝来の宝を独占しようとするが、果たせない。兼親はかつて九郎に思慕を抱いていた志津子を彼の許に向けた。それでも九郎が動かないので、播州屋は京都より志津子の兄桜小路忠房を仲介役として呼ぶ。
次に播州屋は兵庫奉行を言い含めて、勤番所の同心をリストラして長屋を焼き払う。長屋の住民一同を義経ゆかりの鵯越に逃した九郎は、浪人どもの急襲に秘剣揚羽蝶を使って切り抜ける。
六甲山で九郎は、忠房を間に入れて播州屋と再度顔を合せる。播州屋は花に仕込んだ睡眠薬を嗅がせて九郎の自由を奪い、逆さ吊りにして義経の秘宝のありかを言わせようとするが、志津子の体当たりにより窮地を救われる。
九郎は志津子に宝のありかを見せようと島に向ったが、二人の後を兼親と播州屋、新海が尾けていた。九郎は、島に侵入した播州屋と新海を成敗し、兼親と志津子に実は宝物がなかったことを見せる。九郎は、先祖義経は観音様だけを遺したと言って、再び姿を消す。

雑感

時代小説家である柴田錬三郎の「源氏九郎颯爽記」を元に加藤泰が撮った映画「源氏九郎颯爽記 濡れ髪二刀流」は田代百合子が中村錦之助の相手役(許嫁)だった。彼女はこの作品を最後にフリーになる。
本作品はその第二弾である。幕末も近い時代に白い浴衣着を着こなし、関白に付き従う侍とは、何を考えているのかと思うが、カラー映画だから思い切り派手なものにしたかったのだろう。

相手役(でも結ばれない)大川恵子は東映時代劇女優の中でも整った顔立ちで好きだったが、時代劇ブームが終わりを告げる前にサラリーマンと結婚引退してしまった。だから残念ながらこれぞ代表作というものがない。

英国商船長の娘役を演じたヘレン・ヒギンズは、二人きりになって錦之助に対してモーションをかける。笑えるのは、彼女がじわじわと九郎に迫るのだが、九郎もじわじわと腰をずらして身を離そうとする。外国人女性には天下の二枚目もたじたじなのだ。
また英国商船は銃器を秘密裏に播州屋に売り渡しているのだが、船長の娘はこれが自由貿易だと言って憚らない。錦之助もそれ以上追求できず、日本の法で裁くしかないと諦める。外国人にとって資本主義は色恋と別物なのである。
ヘレン・ヒギンズは日本とロシアのハーフで、日本語もロシア語も(そしておそらく英語も)流暢なモデル出身のマルチリンガル・タレントだ。おそらくユダヤ系だと思う。日本映画にも出ていたが、この後新東宝のカルト映画「ソ連脱出・女軍医と偽狂人」に出演し、1960年にアメリカ貿易商の夫ヒギンズ氏ともにアメリカに旅立ってしまった。

スタッフ

企画 辻野公晴 、 小川貴也
原作 柴田錬三郎
監督・脚本 加藤泰
撮影 坪井誠
音楽 高橋半

キャスト

源氏九郎   萬屋錦之介
今出川兼親   河野秋武
今出川志津子   大川恵子
幸田鱒二郎   里見浩太朗
幸田の恋人お鈴   丘さとみ
比嘉忠則   清川荘司
播州屋十兵衛   柳永二郎
播州屋お島   八汐路佳子
新海一八郎   岡譲司
犬山有隣斎   上田吉二郎
祇園東兵衛   岸井明
伊藤紀伊守   明石潮
組頭富田牛生   杉狂児
妻富田とし枝   浦里はるみ
由利五兵次   由利徹
南秋之進   南利明
谷お春   赤木春恵
志津子の兄桜小路忠房   二代目中村歌昇
マリー   ヘレン・ヒギンス

 

 

源氏九郎颯爽記 白狐二刀流 1958 東映京都撮影 東映配給

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