1986年から韓国で発生した連続婦女暴行殺人事件を基にした戯曲を原作にして、大胆に脚色したミステリ映画。なかなか犯人を捕まえられない刑事たちの焦りを描く。

監督・脚本は2019年度アカデミー作品賞を受賞したボン・ジュノ。主演はソン・ガンホ、キム・サンギョン

2003年度大鐘賞(韓国アカデミー賞)作品賞、監督賞、主演男優賞受賞。東京国際映画祭最優秀監督賞受賞。

あらすじ

1986年10月京畿郡華城市の農村で溝に半裸の女性死体が捨てられるという猟奇殺人事件が起きる。地元警察のパク・トゥマンとチョ・ヨングが受け持つが、2ヶ月後同様の手口で第二の殺人が発生する。いずれも赤い服を身につけていたことから連続殺人と考えられて、近所に住む知的障害者クァンホが容疑者として蹴られたり殴られたりの厳しい取り調べを受ける。
ソウル警察から応援としてソ・テユンが派遣され、新しい課長にソが就任する。二人はクァンホの手が麻痺していることから遺体の縛られた跡と矛盾するため、クァンホを釈放する。ソ・テユンは雨の日に犯行が起きること、行方不明者に被害者とよく似た美人がいたことから大規模捜査を行い、腐乱死体を発見する。さらに工場の近くからまた一人死体で発見される。ギオク婦警は犯行のあった日に決まってリクエストされる曲があることを発見し、ソ・テユンはそのリクエスト葉書を押収しようとするがすでに焼却処分されていた。
パク・トゥマンらは第四の現場で自慰にふける男を発見し、また殴る蹴るで自白を強要しようとしていた。ソ・テユンは女子中学生から聞き出した噂話を基に、犯人に襲われながらも助かった女性を見つけ出す。彼女の証言から犯人が女性的な手をしていたことを知る。その夜、同じ曲がリクエストされ再び殺人が起きる。
今度はラジオ局も葉書を残してくれて、パク・ヒョンギュがリクエストしていたと分かる。早速、ヒョンギュを拘禁するが、知能派でのらりくらりと交わされて、学歴コンプレックスを持つチョ・ヨングが切れてしまい、ライダーキックをヒョンギュにかまして取調べを台無しにする。ソ・テユンはパク・トゥマンが録ったクァンホの証言テープの中にヒントがある事に気づき、早速クァンホの家(料理屋)に行くがチョ・ヨングが先に飲んでいて学生グループに絡み大立ち回りを起こし負傷する。クァンホはそれを見て、また逮捕されると勘違いし逃げ出し、列車にはねられて即死する。
結局ヒョンギュは釈放されるが、精液が発見される。当時韓国でDNA鑑定は行われておらず、アメリカでのヒョンギュのDNAと同じものかどうか鑑定結果を待つ。その間、ソ・テユンはヒョンギュを見張り続けたが、ちょっとした隙に逃げられる。
翌日女子中学生の死体が発見される。以前ソ・テユンに噂話を教えてくれた女の子だった。ソ・テユンは怒って、ヒョンギュに暴行を加える。しかしアメリカから二つの検体は一致せずというDNA検査結果が届き、ヒョンギュは再び消えてしまう。

2003年パク・トゥマンは刑事を退職してセールスマンになっていた。彼は久しぶりに現場を訪れて犯行現場を懐かしく見ていた。そこへ小学生が現れ、以前もここでしたことを思い出して久しぶりに来たという人がいたと言った。それが真犯人だったのか?

雑感

上映時間二時間十分を長いと思わせない素晴らしい映画だ。しかし最後まで犯人を見つけられないもどかしさがある。リアリティがあると言えばその通りだが、カタルシスもなかった。

モデルになった華城連続殺人事件(1986-1991)も犯人は捕まらないまま公訴時効を迎えた。映画公開後13年を経て2019年9月になり、終身刑を受け収監中の男とDNAが一致して真犯人と特定された。

刑事映画にも日本の警察ドラマの影響は見られるが、そもそも韓国の警察自体が戦前からの日本のモデルを使っているのだから当たり前だろう。

しかし古谷惣吉、大久保清、勝田清孝並の凶悪犯の起こした連続殺人事件に田舎の所轄刑事三名と本庁の応援刑事一名だけで当たるわけはないだろう。1986年〜1987年は全斗煥大統領から盧泰愚大統領に変わった軍人政治の時期で多少の反政府デモはあったがソウル・オリンピックを控えて、言わば高度成長時代であり、景気は良かったはずだ。途中で警察の人員を増やして、アメリカや日本並の捜査本部を作らなかったのか。日本の県警にあたるものはないのか。そこら辺のリアリティは?

スタッフ

監督 ポン・ジュノ
製作 チャ・スンジェ 、 ノ・ジョンユン 、 キム・ムリョン
脚本 ポン・ジュノ 、 シム・ソンボ
撮影 キム・ヒョング
音楽 岩代太郎

キャスト

パク・ドゥマン刑事 ソン・ガンホ
ソ・テユン刑事 キム・サンギョン
第二の容疑者パク・ヒョンギュ  パク・ヘイル
チョ・ヨング刑事 キム・レハ
シン・ドンチュル新課長 ソン・ジェホ
クー・ヒンボン課長 ピョン・ヒボン
第一の容疑者ベク・カンホー パク・ノシク
パクの恋人ソウル・ユン チョン・ミソン
ギ・オク婦警  コ・ソヒ

殺人の追憶 살인의 추억 2003 韓国製作 シネカノン配給 ボン・ジュノ監督作品

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