興行主たちと歌姫の三角関係と1906年4月18日のサンフランシスコ大地震を絡めたラブ・ストーリー。
クラーク・ゲーブルジャネット・マクドナルドが主演する映画で、スペンサー・トレイシージャック・ホルトが共演する。
原作はロバート・E・ホプキンスが書き下ろし、アニタ・ルースらが脚色し、W・S・ヴァン・ダイクが監督した。「巨星ジーグフェルド」のオリヴァ・マーシュが撮影している。

あらすじ

1905年大晦日の夜、サンフランシスコの下町歓楽街で、火事で焼け出されたメアリー・ブレイクは、キャバレー「パラダイス」に歌手として採用された。オーナーのブラッキー・ノートンはこの地域の顔役だが、メアリーを愛するようになる。メリーも彼を好ましく思っていたが、彼が無神論者であることから牧師の娘であるメアリーには受け入れられなかった。

ジャック・バーレーは上流階級の出身でオペラを公演するティボリ劇場のオーナーである。メリーがオペラ歌手になりたいと知って、ブラッキーに金銭トレードを申し込むが、彼はこれを拒絶した。地主であるバーレーは政治的にもブラッキーの敵であり建物改革委員として選挙に立候補している。地主や家主が違法建築を放置しているため、大規模火災の可能性があるため、ブラッキーは建物改革委員として選挙に立候補する事になった。

ブラッキーと親友ティム・マリン牧師は、メアリーの才能を伸ばしてやるように説いたので、ブラッキーも一晩だけメアリーをバーレーに貸出した。彼女はティヴォリ座でデビューして好評を得るが、ブラッキーは彼女にパラダイスに戻そうとする。ティムはメアリーをオペラ界に戻せと主張したので、ブラッキーは彼を殴りつけメアリーを解雇する。

彼女はブラッキーの恩をわすれなかったが、オペラのスターの座も捨てられない。第二回公演も成功して、バーレーに請われるままに求婚を承諾してしまう。ティムは二人が結婚するとは思ってなかった。
選挙が近づいた。ブラッキーは、三連覇している舞踏競技会に今年も優勝して賞金を選挙費用に当てるつもりだった。
ところが彼のキャバレー「パラダイス」に警察の手入れがあり、芸人や踊り子は検挙されてしまう。これはバーレーの選挙妨害だった。

バーレーと一緒に舞踏競技会を見物していた彼女は、バーレーの汚い真似を知ってしまう。そしてパラダイスのために歌い、優勝する。ブラッキーは自分を裏切った女を許せず、その賞金を投げ捨てる。

その瞬間、サンフランシスコを神の怒りのような大地震が襲う。バーレーは圧死した。ブラッキーはメアリーを求めて探し回るが、そのうち町中に火事が起きた。既に断水しており、大火災を止めるために火が燃え移った家屋を次々と陸軍がダイナマイトで爆破した。ブラッキーに対して同情的なバーレーの母に息子の最期を伝えに行くと、彼女は避難するところだった。彼女が悲しみを抑えて車で立ち去ると、お屋敷が軍によって爆破される。ブラッキーはその有り様を見て、完全に打ちのめされた。街は焼け野原になっていった。
ブラッキーがようやくティムのもとへ辿り着くと、ティムは救援活動をしていた。ティムはいつもの様子と違うブラッキーを認めると、神への感謝を唱えさせた。
そのときメアリーがブラッキーに気付いて近づいて来た。彼女はティムのもとで行われた葬儀に参列して、ボランティアで賛美歌を歌っていたのだ。ブラッキーは彼女を話してはいけないと知った。
そのとき、大火災が治まったと言う報が届く。二人はサンフランシスコ再建のため、人々と共に立ち上がるのだった。

雑感

初期の大災害映画(ディザスター・ムービー)だが、昔はCGがなかったので、最後の20分になるまで地震は起きない。
それゆえに登場人物を平常時から非常時まで十分に描くことができた。特に主役ブラッキーは大地震の威力を目の当たりにし、ライバルのバーリーが死んで自分が生きていることに神の存在を深く感する(日本人には少々宗教臭い)。
パニック・シーンではW.S.ヴァン・ダイク監督の師匠である巨匠D.W.グリフィスに演出を、グリフィス組の先輩であるエリック・フォン・ストロンハイムに脚本の一部をお願いしている。

ジャネット・マクドナルドは当時のミュージカル・スターで、トーキー時代になって1929年パラマウントのエルンスト・ルビッチ作品「ラヴ・パレード」でモーリス・シュバリエと共演して映画デビューしたのち、ユナイト、フォックス映画などにも主演した。満を持して1934年MGMに移籍し、ネルソン・エディとの共演シリーズなど一連のヒット・ミュージカルに主演した。パートはソプラノで、自らも実際のオペラに出演するほどだった。彼女と入れ替わるようにして、MGMで活躍したキャサリン・グレイソンより声がやや低いが歌はうまかった。
この作品ではシャルル・グルノーのオペラ「ファウスト」とヴェルディのオペラ「椿姫」を劇中劇として演じていて、それらから何曲か歌っている。「雨に唄えば」でも採用されたスタンダード曲「ウッド・ユー」、さらに主題曲である「サンフランシスコ」さらにラストの「ヨドバシ・カメラ新宿西口店CMソング」(アメリカでは「リパブリック讃歌」と呼ばれ南北戦争での北軍軍歌)まで熱唱して合計で12、3曲歌っている。

クラーク・ゲーブルは学はないが、下町の顔役として人気のある役。オスカー俳優といえ歌わないから、ギャラはマクドナルドの方が高かったはずだ。それに不満を持ったのかクラーク・ゲーブルは彼女とのキス・シーンの直前にニンニクを食べた。彼女は知らずにキス・シーンを演じたが、その後臭くて失神しそうになった。それぐらい、二人は犬猿の仲になって、演技以外では口も聞かなかったそうだ。

神父役スペンサー・トレイシーはラストで神の御業を目の当たりに見たクラーク・ゲーブルに神の道を示す。どう見ても助演男優賞候補なのだが、クラーク・ゲーブルもジャネット・マクドナルドも辞退したのかトレイシーがアカデミー主演男優賞にノミネートされてしまう。ポール・ムニがライバルだったのでここは落選するのだが、翌年から2年連続でアカデミー主演男優賞を受賞する(われは海の子、少年の町)。2年連続主演男優賞はトレイシーが史上初で、その後56年経った1993年からトム・ハンクスが2年連続主演男優賞に輝くまで誰も為し得なかった。
クラーク・ゲーブルとスペンサー・トレイシーは仲が良かったが、トレイシーが二年連続アカデミー主演男優賞を受賞しながら、共演すると常に一回しかオスカーを受賞していないクラーク・ゲーブルの方が待遇が良かったのが不満で、1940年の「ブーム・タウン」を最後に共演はない。

ジャック・ホルトはクラーク・ゲーブルの恋のライバルであり、上流階級の地主の跡継ぎの役。ジャネット・マクドナルドは芸術を理解するホルトと、粗野なキャバレー・オーナーのゲーブルの間でどっちを取るか迷うわけだ。

 

 

カリフォルニア州の中心サンフランシスコが地震で一時崩壊したおかげで大きく成長したのが、ロサンジェルス市である。

 

スタッフ

監督 W・S・ヴァン・ダイクD. W. グリフィス(クレジット無し)
製作 ジョン・エマーソンバーナード・H・ハイマン
脚本 アニタ・ルース、エリック・フォン・ストロンハイム(クレジット無し)
原作 ロバート・E・ホプキンス
撮影 オリヴァー・T・マーシュ

 

キャスト

興行主ブラッキー・ノートン  クラーク・ゲーブル
歌手メアリー   ジャネット・マクドナルド
ティム・マリン神父   スペンサー・トレイシー
地主ジャック・バ-リー    ジャック・ホルト
バーリー夫人  ジェシー・ラルフ
マット  テッド・ヒーリー
トリキシー   シャーリー・ロス
前の愛人デラ  マーガレット・アーヴィング
ベイブ   ハロルド・ヒューバー
教授(メアリーの理解者)    アル・シーン
音楽家バルディニ氏  ウィリアム・リシャルディ

 

桑港 San Francisco 1936 MGM製作・配給

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