筒井康隆の名作ジュブナイル小説の映像化。劇場版としては1983年原田知世デビュー作に次ぐ14年ぶりの作品。前作で製作した角川春樹が、1993年角川書店を弟歴彦に譲ったのち、大林宣彦に代わり自ら監督を務めた。
主演は神戸出身のモデル中本奈奈、初演技で大抜擢人事だった。相手役もデビュー作となった中村俊介。珍しく白黒映画だ。

あらすじ

新年を迎える飛騨の三寺参り。芳山和子は友達を誘うでもなく誰か人待ちの様子であった。

昭和40年のある日の回想シーンに入る。当時、中学生だった和子は親友の神谷真理子たちと学校を歩いていると、幼馴染みの五郎が英語のノートを貸してくれと頼んでくる。自分の汚いノートを見せたくないと思っているところに真理子が私が貸すと言って助け舟を出してくれた。

和子のクラスに、イギリスから帰国したという転校生の一夫が転入する。英語がペラペラな一夫のミステリアスな一面に、和子は胸のときめきを感じる。
理科準備室で物音を聞いた和子は、床に割れた試験管が落ちているのを発見する。試験管から漂う臭気にラベンダーの匂いを感じた瞬間、彼女は意識を失う。
帰宅後、和子は眠っていると地震が起きる。五郎の家が火事になり、早速見舞いに行く。それは言い訳で無くした時計を五郎が隠していると知り、返して欲しいと頼みに行ったのだ。しかし五郎は返してくれなかった。
翌日になると日付が昨日のままで、なぜかみんな昨日のことを覚えていない。彼女は一夫に助けを求めるが、彼は未来人だと告白し、和子が嗅いだ薬品は、彼がタイムリープをするために開発した薬だった。もう一度、地震の後、五郎と会わなければ時計を取り戻せないと教えられ、勇気を持って五郎と対決して時計を取り返すことに成功する。全てを悟った和子は一夫を愛してることに気付く。
しかし、違法なタイムリープを行った一夫はタイム・パトロールから追われていた。ついに彼は逮捕され、和子の記憶も、彼らの手によって抹消される。

それから15年後、和子は15年前に出会ったはずの誰かを三寺参りで待ち続けていると、ついに一夫に再会する。

雑感

最初に新年の三寺参りのシーンが出てくるから、前作の尾道市でなく岐阜県飛騨市が舞台だ。
この作品は、NHKドラマの石山版でなくて原作に設定を合わせている。原田知世版でも思ったが、中本奈々は暗い性格として演じている。しかし原作の芳山は暗いわけではなくて大人しい少女だと思う。原田知世は暗い少女を演じさせても様になっていたが、恐らく中本は派手なモデル出身であり、暗い子ではなかったので相反する性格を演じさせられて戸惑っている感じがする。
さらに共演の中村俊介までデビュー作とは少しやりすぎだ。五郎役の早見城まで棒読みで、落ち着いて見ていられなかった。原田知世の時は五郎役は、独特な味で今も活躍する尾美としのりだった。
過去の大林宣彦監督作品という良い見本があったのに、角川監督は主役の選択を失敗して簡単な映画を相当難しくしてしまったのではないか?

スタッフ

監督 角川春樹
製作 角川春樹
プロデューサー 黒澤満 、 青木勝彦
原作 筒井康隆
脚本 伊藤亮二 、 桂千穂 、 角川春樹
撮影 仙元誠三

キャスト

芳山和子 中本奈奈
転校生深町一夫 中村俊介
母芳山有紀子 倍賞美津子
祖母芳山ミチエ 久我美子
父芳山治男 伊武雅刀
友人神谷真理子 浜谷真理子
友人遠藤梢 山村久美
幼馴染浅倉吾郎 早見城
福島先生 野村宏伸
大原先生 早見優
星先生 榎木孝明
骨董屋主人 渡瀬恒彦

時をかける少女 1997 角川春樹事務所製作 「時をかける少女」上映委員会配給

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