失業中の親子三人の姿を淡々と描いた作品。
文学座が製作、総出演(63年に劇団雲と劇団NLTに分裂する以前のまさにオールスター)しているが、監督は佐分利信で主演は宝塚出身の淡島千景

 

三吉は船舶技師。
不況の余波で職を失って、それ以来毎日「田園交響楽」をかけて赤ん坊とぶらぶらと過ごしている。
生計は主に妻のすず子の裁縫仕事でまかなっていた。
となりに人妻と保険外交員が駆け落ちしてきてから、話し相手ができて賑やかになった。
すず子は母と姉が住む家へお仕立てものを届けに行く。
姉の知り合いのご婦人が注文してくれたのだ。
ところがその婦人がすず子の仕立てを気に入らず、やり直しとなる。
くさくさしてすず子は夫に当たるが、夫はのれんに腕押しである。

 

 
ただ失業者の日常を淡々と描く。
佐分利信の責任もあるのだろうが、ずいぶん実験的な映画だ。
往年の文学座ファンにはたまらないだろうが、俳優座ファンは面白くも何ともないのではないのかな?
劇団民藝と新藤兼人監督は主義主張をはっきりさせた映画を撮ったが、文学座は個性が足りない感じ。
ただ、加藤治子のヤンキーな娘姿には感動した。
いまでも不良婆の演技をするが、昔の方が数倍うまかった。
地はああいう人なのだろう。

 

 
監督 佐分利信
脚本 田中澄江 井手俊郎
原作 田中澄江
企画 吉田千恵子
製作 文学座
撮影 藤井静
美術 松山崇

 

 
出演
芥川比呂志 (失業中の笹山三吉)
淡島千景 (妻すず子)
杉村春子 (となりの愛人森下さん)
仲谷昇 (となりの保険外交員志野君)
長岡輝子 (すず子の母山崎とき)
文野朋子 (すず子の姉でバツイチの山崎たか子)
加藤治子 (おきゃんぴーな岸フミ)
丹阿弥谷津子 (同級生で愛人をしている原)
宮口精二 (するめ売りの鈴木)
賀原夏子 (スタイル自慢の富永夫人)
三津田健 (歌う郵便屋)

心に花の咲く日まで 1955 大映・文学座

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