野村芳太郎監督の出世作。
松本清張の短編が原作で、橋本忍(「七人の侍」「砂の器」他)が脚本を書いている。

ユニークな作品である。
主婦高峰秀子と刑事大木実の二人芝居のようなものだ。
たとえば高峰秀子の傘を回すシーンが印象的。
そのようなシーンは原作にはなかった。
大木実の恋人(高千穂ひずる)の話も映画のオリジナルである。
小説ではただ「家族」としか述べられていず、女房持ちかと思っていた。
天下の橋本忍脚本だけに、松本清張もOKを出したようだ。
あるいは松本清張自身がアイデアを出したか?

もちろん原作は素晴らしい
これが松本清張にとって最初に書いた推理小説だった。

 

しかし原作と映画は同じではない。原作は自由度が高い作品である一方、脚本作りはある程度の自由度を消す作業だ。
この映画は可能な限り、原作の持つ間合いの良さ、余韻をうまく演技とカメラワークでつないでいる。
しかも傘のシーンのように原作では何も語られなかった感情を見せているのである。

 

正直言って、最初は原作絶対主義者だったので映画の良さはわからなかった。
何年かしてNHKBSで再び見た。
その時初めて原作とは少し違う作品として見ることができて、この映画の素晴らしさに気付いた。

出演
大木実
高峰秀子
田村高廣
宮口精二
松本克平
高千穂ひずる

 

監督 野村芳太郎
脚本 橋本忍
製作 小倉武志
音楽 黛敏郎
撮影 井上晴二

張込み 1958 松竹

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張込み 1958 松竹” への1件のフィードバック

  1. 「張込み」

    切ないです。
    松本清張の原作を橋本忍が脚色。
    監督は野村芳太郎。
    老練の刑事(宮口精二)と若い刑事(大木実)が
    東京から列車に乗り込む。
    クーラーなど無かった時代。
    真夏。額には汗がにじみ、落ちる。
    窓を開け放たれた蒸気機関車は何処へ?
    彼らは強盗殺人犯を追って
    男の昔の恋人が住む九州に向かっていた。
    二人は女の家の向かいにある旅館に宿をとる。
    黛敏郎の無機的な音楽が効果的。
    吝嗇な銀行家の後妻になり、つつましく暮らしている女
    (高峰秀子)�…

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