パリに住む貧しい夫婦に宝くじが当たる。しかし夫が当たり券をなくしてしまい、、、。
新婚夫婦の微妙な心理を描き、カンヌ国際映画祭恋愛心理映画賞(パルムドール相当)を受賞したジャック・ベッケル監督の「パリ市井三部作」第一弾。
ちなみに第二弾は「七月のランデブー」(1949)、第三弾は「エトワールとキャロリーヌ」(1951年)である。
主演はロジェ・ピゴークレール・マッフェ。二人の仲を割こうとする悪役はノエル・ロックヴェール。白黒映画。

あらすじ

パリに住む印刷工のアントワーヌと「プリジュニック」でデパートガールをするアントワネットは恋愛結婚したが、ともに薄給なので赤ちゃんが欲しいがそれも出来ず、夫婦共稼ぎをしてアパートの屋根裏で暮らしている。
言い寄る男どもを振り切りながらアントワネットが食料品店で隣人で出札係のジュリエットに頼まれたネギを買うと、店主ローランはいわしの缶詰をおまけに付けてアントワネットに色目を使う。
夜、アントワーヌがラジオアンテナの改造に夢中で屋根裏に上がっているのを良いことに、リトンが言い寄るが難なく交わす。しかしリトンはめげずに、バルベロが夜警の仕事に出かけたところを見計らってユゲットと浮気をする。ジュリエット夫妻は子供のお守りをアントワネットに頼んで映画を見に行った。

翌日の夜、ローランに言い寄られたことをネチネチ責めていたアントワーヌはアントワネットの持っていた富くじに気付く。早速新聞で調べると、何と八十万フラン(当時の80万円相当)が当たっていることを発見する。アントワネットもそれを知って大喜びする。その夜中、アントワーヌは当たりくじを「クラブのA」という本に挟んで寝る。
翌日、印刷工場を休んでアントワーヌはくじを財布に入れて、賞金をもらいに行く。地下鉄で切符を買い、会場に着くと財布がない。地下鉄切符売り場でなくしたらしい。

連絡がないのでアントワネットは心配してデパートを飛び出して探しに家へ帰る。いつも行くカフェが娘の結婚式をしていたが、アントワーヌは一人やけ酒を飲んでいた。すると新郎の父が来て、一杯奢る。花婿は財布を地下鉄で拾ったことを思い出した。カフェの主人はアントワーヌが財布をなくしたことを聞いていたので、早速アントワーヌに確かめてから返してあげる。ところがそこには当たりくじではなく、ハズレくじが入っていた。
昨日見た宝くじは夢だったのか、心が空になったアントワーヌがアパートへ帰ると、アントワーヌが、カフェで噂を聞いたローランが当たりくじを無くすようなヘマより俺の方が良いと言って、アントワネットに言い寄っているところだった。アントワーヌの堪忍袋の尾が切れてしまい、大乱闘が始まった。隣人たちにアントワネットは助けを求めるが、ボクサーのリトンはアントワーヌが勝ちそうなので思い切り戦わせた方が良いという。ところがあと少しでアントワーヌがノックアウト勝ちが、逆転のキックが決まりアントワーヌはバランスを失い頭を打って失神する。さらにとどめの一撃をローランが決めようとするところにリトンが割って入り、ローランは階段を転びながら逃げ出した。
アントワーヌは夢の中で宝くじを本の挿絵のところから抜いたことを思い出した。しかし昨晩は挿絵のないところに隠したはずだ!
目を覚ますと、ジュリエットがその本「クラブのA」を持ってこちらを心配そうに眺めている。起き上がったアントワーヌはその本を返してもらい、めくると当たりくじがやっと出て来た。
そして場面は代わり、無事80万フランを手に入れ待望のサイドカーを買った二人が並木道で幸せそうに飛ばしていく。Fin.

雑感

トリックというか?どこでアントワーヌが勘違いしたかは、この本が宝くじ売り場に出てきた時から順を追って見れば、誰でもわかる。

日本の長屋や下宿アパートが、フランスでのアパルトマンに当たる。どちらも人情豊かだし、隣人同士の嫉妬もあるし、中には浮気をして隣の女房と逃げる間男もいる。
その意味で、花の都パリと言っても昔の日本人が親しみが持てる貧民窟はあったのだ。

そういうパリの市井を描いたジャック・ベッケルは、非常に日本の同時代映画作家(小津安二郎、清水宏、木下恵介ら)と似ていると思う。こういう映画は日本の戦前にも多かった。

いつも悪役をやっているノエル・ロックヴェールが今回もヒロインに言い寄って場を引っかき回す役だ。

無名時代のジャン・マルク・チボールイ・ド・フュネがチョイ役で出演している。髪の毛が豊富なルイ・ド・フュネに気が付くかな。

スタッフ

監督 ジャック・ベッケル
製作 C・F・タヴァノ
脚本・台詞 ジャック・ベッケル 、 モーリス・グリッフ 、 フランソワーズ・ジルー
撮影 ピエール・モンタゼル
音楽 ジャン・ジャック・グリュネンワルド

キャスト

夫アントワーヌ ロジェ・ピゴー
妻アントワネット クレール・マッフェ
食料品店主ローラン ノエル・ロックヴェール
駅の出札係(隣人)ジュリエット アネット・ポアーヴル
バルベロの妻ユゲット(隣人)  ポーレット・ジャン
夜警バルベロ  ジャック・メイラン
ボクサーのリトン(隣人)  ピエール・ツラボー
リトンの母 イヴェット・ルーカス
ジュリエットの夫マルセル  ピエール・ルプルー
カフェの娘アラーヌ  ユゲット・ファジェ
新郎アドリアン フランソワ・ジュー
食料品店のレジ係  ジュディス・カリエ
カフェのオーナー チャールズ・カミュ

幸福の設計 Antoine et Antoinette 1947 仏ゴーモン製作 東宝国内配給 ジャック・ベッケル監督作品

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