東映の始まった「不良・暴走族・スケバン」シリーズの第一弾。俳優梅宮辰夫が最も気に入っている映画シリーズであった。不良と言うのは、暴力団など古くて大きな組織に所属していないで、グレた若者たちのこと。愚連隊は、江戸時代からある動詞グレるから現代になって派生した語だ。今は半グレという新語が生まれている。

第一弾は彼らが組織暴力に対抗して、大企業を恐喝して金を巻き上げるフィルム・ノワールヌーベル・バーグ風映画だ。
監督は独特の美学がある野田幸男、音楽は八木正生。
主役は梅宮辰夫、ヒロインは夏珠美、共演は谷隼人、克己しげる、ジョー山中、小野川公三郎、大原麗子ら。

あらすじ

神坂は30歳近いが暴走族集団のボス、新宿に彼を慕ってタニー、ポパイ、ロクオン、お豊らが屯している。彼らの手口はまずイケメンのタニーがナンパしていい雰囲気になったところで、他のメンバーが現れ、回してしまう。さらに女を手懐けて、梨江のクラブで腹かせて紹介料をせしめる。神坂を除いた不良少年たちは女性3人組をナンパして、睡眠薬入りのカクテルを飲ませて、いつものように部屋に連れ込み、回すつもりだった。ところが今日に限って男どももみんな寝てしまう。実は龍子がビールに睡眠薬を入れていたのだ。龍子が帰ろうとすると、神坂が現れ有無を言わせず龍子の処女を奪う。
神坂の前に昔馴染みの河本が現れる。河本は関西の大手暴力団から東京の新興暴力団大江興業に出向していた。

 

 

一方、龍子の親だと言う榊組の親分が会いたいと言ってくる。親分は神坂の切符に惚れ込み、ライバルである大江産業が建設を行なっているホテルから3000万円を奪ってほしいと依頼する。
そこでホテル社長の愛人矢代由紀子を脅迫して社長と大江産業側の会話を録音させることに成功する。これで3000万円を強請ったが、大江産業はロクオンを射殺し、大江産業と榊組の間で話が付いてしまった。
収まらないのは神坂で、今度はホテル社長の妻を誘拐して身代金として3000万円を奪う。早速大江産業も報復として神坂グループの根城を襲い、金は奪い返され現場にいた榊組が全滅させられた上にお豊も射殺される。
神坂らは大江産業と銃撃戦を開始する。そして最後に残った神坂と河本の一騎討ちとなり、神坂が撃たれながらも生き残る。そして龍子の車に乗りながら、早朝の新宿を逃亡するのだった。

 

雑感

東映が仁侠から不良(暴走族)へ移行した記念すべき映画。
最も美しかったのが、大原麗子死の舞踏(ダンス)だった。機関銃で射殺されるシーンで見せるのだが、まるでバレエを舞っているように見えた。ヒロインの座は東映生え抜きの夏珠美にさらわれたが、東宝から移籍組の大原が一番の見せ場を持っていった。

 

 

夏珠美は子役出身で映画「月光仮面」のレギュラーだった。テレビにも出ていた美人女優だったが、結婚が早かったのか大成はしなかった。

暴走族役は日活出身の谷隼人、歌手の克己しげる(一曲歌う)とジョー山中、大映出身の小野川公三郎、東映生え抜き遅咲きの小林稔侍ら個性的な面々。

梅宮辰夫六本木野獣会と東映のあぶれ組で、大ヒット・シリーズを生み出したのだ。

最後に八木正生が、ジャズ風の音楽を付けている。

スタッフ・キャスト

監督 野田幸男
脚本 松本功 、 山本英明
企画 吉田達 、 矢部恒
撮影 山沢義一
音楽 八木正生

配役

神坂弘 梅宮辰夫
ライバル河本五郎 梅宮辰夫
榊龍子 夏珠美
榊組の組長 石山健二郎
不良タニー 谷隼人
ポパイ 保高正信
ジュン ジョー山中
ランキング 克美しげる
ロクオン 小野川公三郎
和夫 小林稔侍
お豊 大原麗子
大江興業社長 渡辺文雄
大江興業染谷 室田日出男
榊組のニギリ松 左とん平
君代 泉京子
クラブのママ梨枝 沢たまき
ホテル社長の愛人矢代由起 應蘭芳
桜井ホテル社長 永井秀明
民子 桑原幸子
ナオミ 藤江リカ (大阪のズベ公)

 

不良番長 1968 東映 追悼 梅宮辰夫

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