タイトルは「マッドボンバー」と書いてあるが、もちろん正しい読み方ではない。アメリカ人なら「マッドバマー」と読む。1977年に、女性ロックバンド、ザ・ランナウェイズがヒットさせた曲 “Cherry Bomb” の邦題を「チェリー・ボンブ」とジャケットに書いている。DJも仕方がないからその通り読んでいる。その時、日本に絶望を感じたw。その前にも東京ボンバーズがいたな。

 

原題は最初の公開では”The Mad Bomber” だったが、映画「フレンチ・コネクション」が当たったため配給会社シネメーション・インダストリーが、題名を”The Police Connection”と変えて再配給を行った。さらにその後も”Detective Geronimo” とか “Geronimo” などと改題を繰り返して再封切りをしている。これは日米問わず中小配給会社のよくやる手である。

 

今回初めてBlu-Ray でノーカット版を見た。日本テレビ放映版や以前DVDとして発売されたバージョンとも違い、「何でもあり」だった。
監督は「戦慄プルトニウム人間」の生みの親 Mr.BIG ことバート・I・ゴードンだ。エド・ウッドと違い、彼はSFやポルノだけでなく普通の映画をでも撮れると思っていたが、この映画を見る限り、彼はまさに超一流のB級監督だったと分かる。
脚本も撮影もバート・I・ゴードンだが、原作は「シャレード」の原案を書いた推理小説家マルク・ベームだ。だから映像は予算がないからまるでテレフィーチャーだったが、構成が少しだけマシになっている。

 

主役は人気テレビドラマ「ライフルマン」主演のチャック・コナーズ、同じく人気テレビドラマ「ベン・ケイシー」のタイトルロールであるビンセント・エドワーズ、さらにテレビ版「アンタッチャブル」のアル・カポネ役で有名なネヴィル・ブランド
この三人が同じ映画に出演したことが信じられないうえに爆弾魔、鬼刑事、強姦魔を演じるとあっては触手が動かないわけがない。

 

 

この事件にはモデルとなる爆弾魔ジョージ・メテスキーがいる。1940年から爆破事件を起こし、律儀にも太平洋戦争中は中断すると警察に文書を送りつけ、1951年から犯行を再開して1957年に捕まるまで繰り返した。
、ノーカット版は映画館で見るならR18+だろう。

 

Synopsis:
道にタバコを捨てた男に厳しく説教する男ドーンは、愛する娘を失ったがために世を恨む連続爆弾魔だった。ドーンは大学の前を通ると、如何にもキャピキャピした女子大生が構内に入っていく。そう言うのを聞くと彼はムカつく。彼女らの後を追って更衣室に爆弾を仕掛け、何食わぬ顔で大学を去る。その直後、大爆発が起きて、その後には裸の女の死屍累々である。
彼は次に狙ってのは夜の病院だった。爆弾は爆発するが被害は少なかった。しかも犯人を見た男がいた。犯行時間帯に病院に忍び込み、入院患者をレイプしていた連続強姦魔である。
もちろん強姦魔も姿を消し、精神的におかしくなった被害者の協力は期待できない。危険な爆弾魔を逮捕するためには、連続強姦魔を確保することが早道だと確信したジェロニモ刑事は過去の被害者に当たることから始める。しかしこれと言った情報が得られない。そうしてるうちにも、強姦魔は次のターゲットを見つけ山の中でレイプするが、逃げられそうになったので殺してしまう。
連続爆弾魔の方はレストランに爆弾を仕掛けて、そこで行われていたウーマンリブ大会に参加していた女性たちを血祭りに上げる。
ジェロニモも別れた妻が再婚することでイラついていた。何としても連続強姦魔を挙げて、連続爆弾魔を死刑にするつもりだ。そのためには夏に婦警に薄着をさせて囮捜査も辞さない。我慢出来ずフロムリーが逮捕された。家宅捜索すると奥さんのヌード写真やポルノビデオが出てきて、変態丸出しであり、限りなく黒だ。
否認を続けるフロムリーにジェロニモは最終手段に訴える。警察署内でお前を射殺しても俺なら90日の停職で済む。この凄みに流石の変態フロムリーも押されて、ついに白状する。そして犯人を捕えられたら司法取引に応ずることでモンタージュ写真の作成に協力させる。
早速モンタージュ写真を病院の受付に見せると、最近病院で娘をヘロイン中毒で亡くした男にいるということで、ドーンの身元が突き止めることができた。ガサ入れをすると本人は外出中だが、過去に犯行が行われた場所が彼あるいは娘に関係する組織や団体の関わるものだった。
一方、新聞で自分の情報をタレ込んだのがフロムリーだと知ったドーンは、自宅に忍び込みフロムリーが妻のポルノビデオを夢中になって見ながら絶頂に達するところで爆弾が爆発するように仕掛けて、いち早くその場を逃げ出した。
ジェロニモは彼の履歴からすると次に狙うのは、昔いた会社に違いないと判断した。かつて労災関係でトラブルがあって退職したのだ。会社に警官隊と張り込んでいると、ドーンは何故かすごく遅いサイドカーに乗ってやって来た。警官隊が一斉射撃するといつのまにか彼は消えてしまい、サイドカーだけがガソリンに突っ込み大炎上を起こす。
逃げたドーンは警察に最後通牒を突きつけた、赤いライトバンで街の中心を回りながら、大勢が集まったところでダイナマイトでみんなを道連れにして心中すると。
ジェロニモは最前線に立ってライトバンをマークする。そして人気のない通りで大型トレーラーで挟み撃ちにして、ドーンを車から引き摺り下ろしダイナマイト対拳銃の最終決戦に出る。

 

 

もちろん、ツッコミどころ満載である。おそらく原案では筋が通っていたが、うまく映像化できなかった部分があった。それを羅列すると、仕事をする暇がない。
しかし1970年ごろ近代映画社の「スクリーン」や集英社の「ロードショー」を愛読していた人なら、この破天荒さはわかってもらえるだろう。キネ旬派には合わないかもしれない。
要するに「フランケンシュタインと狼男」の現代版である。しかも何でもありの異種格闘技戦なのだ。老いたとはいえ、ライフルマン対アル・カポネ対ベン・ケーシーの殺し合いに興奮できない人間が同好の士にいるとは思えない。
何回も配給し直したのだから、配給会社はそれなりに儲けたが、三年後に倒産している。監督バート・I・ゴードンは一銭にもならなかったそうである。しかし彼はこの作品で映画界に名を残せたんだから文句はないだろう。2018年現在、95歳だそうだ。

 

 

監督 バート・I・ゴードン
脚本 バート・I・ゴードン
原案 マルク・ベーム
製作 バート・I・ゴードン
音楽 ミシェル・メンション
撮影 バート・I・ゴードン

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出演者
ヴィンセント・エドワーズ (ジェロニモ刑事)

チャック・コナーズ (爆弾魔ドーン)

ネヴィル・ブランド (強姦魔フロムリー)

マッドボンバー (The Police Connection : The Mad Bomber) 1972 (アメリカ) 連続爆弾魔vs連続強姦魔vs狂える鬼刑事

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