今をときめくフランス映画女優陣をブロンテ三姉妹に配した作品。
アン・ブロンテは読んでいないが、シャーロット・ブロンテ「嵐が丘」は漫画「ガラスの仮面」の中でも上演されていたから、原作を何度も読んで涙したものだ。エミリー・ブロンテ「ジェーン・エア」もオーソン・ウェルズの映画で見て、原書を読んだ。

監督はアンドレ・テシネ。主演はマリー=フランス・ピジェ、イザベル・アジャーニ、イザベル・ユペール

あらすじ


19世紀のイギリス文学界はジェーン・オースティン、チャールズ・ディケンズ、コナン・ドイルと続けて輩出し、印刷業の発展もあって大盛況となっていた。
ヨークシャーのハワースの丘に老父と暮らすブロンテ三姉妹と長男ブランウェル。
兄は詩人で家庭教師をやっていたが、そこの奥様に溺れ、相手にされなくなると、アヘンに手を出す。
三姉妹の姉シャーロットと二番目エミリーはベルギーに留学するが、学資を出してくれたおばが亡くなり、志半ばでヨークシャーに戻る。
自暴自棄な生活を送るブランウェルを刺激しないために、偽名でシャーロットは「嵐が丘」エミリーは「ジェーン・エア」アンは「アグネス・グレイ」を出版してベストセラーとなった。
正体不明の三人は誰かと、世間の詮索が始まる。
これから才能が花開くと言うとき、ブランウェルは中毒で亡くなり、兄を非常に慕っていたエミリーに続いてアンまでもが病に冒される・・・。

 

雑感

ブロンテ家はヨークシャー在住だったからイングランドの話を、フランス語で演じている。
しかもブリュッセル留学のエピソードも当然にフランス語。
イギリス人がベルギー人に田舎者扱いされる感じが全く出ていない。
まずそこに違和感があった。

ブロンテ三姉妹の伝記は欧米では学校で習って有名だろうが、日本ではもう教えられていないし、おそらく子供向けに伝記は出版されていない。
だから文学作品の生みの苦しみを省略して、エピソードだけを抜き出して描いているのは、日本人にわかりにくいだろう。
ただし、シャーロットが「嵐や丘」は嫌いと言ったのは印象的だった。

彼女らの文章に男性的なものを感ずるという評論家がいた。
おそらく弟の文章に強い刺激を受けていたのだろう。
彼が情緒的なのに対して、姉シャーロットは「嵐が丘」のキャサリンを客観的に描いていたのだ。

シャーロットはイザベル・アジャーニが適役だろうと思っていたが、それだけ思慮深い女性だったなら、マリーフランス・ビジェの方が良い。
末っ子役イザベル・ユペールとの共演(ダブル・イザベル)がこんなに若い頃から実現しているとは知らなかった。
この頃はさすがにアジャーニの方が良いな。
年齢を重ねて、ユペールの方が好みになってきた。

 

スタッフ

監督 アンドレ・テシネ
脚本 アンドレ・テシネ パスカル・ボニゼール ジャン・グリュオー
撮影 ブルーノ・ニュイッテン

 

キャスト

マリー=フランス・ピジェ (シャーロット・ブロンテ)
イザベル・アジャーニ (エミリー)
イザベル・ユペール (アン)
パスカル・グレゴリー (ブランウェル)

ブロンテ姉妹 Les Sœurs Brontë 1979 仏アクシオン他製作 ゴーモン配給 パシフィック・シネマ・ジャパン国内配給(1988)

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