古書屋店主栞子が古書にまつわる謎を解く日常ミステリ。作中に現れる古書は実在するもので評判になった絶版本が復刊されたりしてる。

三上延原作2011年発刊開始のシリーズで、文庫本として初めて本屋大賞にノミネートされた作品。
それを剛力彩芽主演で2013年に一度テレビドラマ化したが、この度黒木華、野村周平主演で改めて映画化した。
企画は有名プロデューサー小川真司、監督は三島有紀子

 

あらすじ

 
鎌倉に住む大輔は子供の頃祖母に夏目漱石の「それから」を盗み読みして怒られたトラウマでディスレクシア(失読症)になってしまった。祖母の遺品整理をしていたら、その本があった。また中身を見ていると祖母の若い頃の写真と田中嘉雄というサインが出てきた。レシートにビブリア古書堂の店名があったので、そこを訪ねる。
若い店主栞子は本を一目見て、祖母の秘密を悟る。大輔がその店で働き始めると、祖母は田中と不倫していたことを語る。もしや大輔の祖父もその田中かもしれない。
彼女はもう一つ秘密を語る。実は階段で突き飛ばされて大怪我をしていたのだ。犯人は大庭葉蔵と名乗る男だが、太宰治の「晩年」の登場人物の名である。彼女が持つ「晩年」の高価な古書を狙っているらしい。
稲垣という男が栞子と大輔に古本市で知り合い、以来ビブリア古書堂に頻繁に現れるようになる。稲垣もネット古書店主であり、貴重な古本を盗まれたことがあると言う。栞子はその話を聞くや否や、一軒の家を見つけ出す。その家の主こそ古本泥棒だったが大庭葉蔵ではなかった。
栞子は店内のディスプレイに「晩年」の古書の偽物を置いて、大庭の出方を見る。早速、店に火がつけられ、偽「晩年」が盗まれる。こうなっては、偽物とバレるのは時間の問題であり、次は金庫の中も探られる。大輔は金庫な中の「晩年」を守るから僕に預けてほしいと言い、半ば強奪するように預かるが、家に帰った途端にスタンガンで眠らされ、本を奪われる。
翌朝、栞子に謝りに行くと、その本も偽物だと言う。信用されていなかったことに気付いた大輔は店を去る。大輔を排除した大庭葉蔵はいよいよ栞子に対して毒牙を剥く。実は稲垣こそが大庭葉蔵だったのだ。あわやのところで、稲垣が犯人である証拠を握った大輔が飛び込んで、栞子と「晩年」を軽トラに乗せて逃げ出す。稲垣もバイクで執拗に追う。湘南海岸まで逃げて、車から降りて突堤を走るが行き止まりだ。稲垣は大輔と取っ組み合いになるが、稲垣がマウントを取って首を絞める。それを見た栞子は古書よりも大切なものがあることに気づき、「晩年」を海に投げ捨ててしまう。稲垣は絶句し、大輔は海に飛び込んで探すが見つからなかった。
稲垣は田中嘉雄の孫で、死んだ祖父の所蔵していた「晩年」を探していた。しかし栞子の「晩年」は直接太宰の関係者から栞子の祖父が譲られたもので、田中のものとは別だった。

 

雑感

 
映画は原作やドラマとエンディングを大きく変えている。その辺りに注目したが、かえって傷口を広げてしまった。

最後は稲垣が大輔と同じ祖父の孫同士であり、稲垣が亡くなった祖父の作品「切通坂」を栞子に読ませる。そして栞子は大輔にそれを読ませてみる。大輔は身内の書いた私小説だから、手紙のように読めてしまう。

 
1960年代と現在が行き来する展開で、黒木華と野村周平の現在編のストーリーと夏帆と東出昌大の過去編(オリジナル)が独立して進んでいく。そしてラストで二つは交わっている。過去編自体が祖父の実体験であり、書いたストーリーになっている。

現在編の脚本は原作以上に穴だらけである。どうして街中で稲垣に追われているシーンで助けを求めたり、警察に行かないのか?
過去編はそれと比べると、夏帆の演技力が際立っていて面白かった。
EDでサザンの主題歌がかかるが、ボーカルが原坊なので鎌倉湘南映画の雰囲気に合っている。

スタッフ・キャスト

 
監督 三島有紀子
企画   小川真司
プロデューサー 服部美穂 、 千綿英久
原作 三上延
脚本 渡部亮平 、 松井香奈
撮影 阿部一孝
音楽 安川午朗
主題歌 サザンオールスターズ「北鎌倉の思い出」

 

配役
篠川栞子 黒木華
五浦大輔 野村周平
稲垣   成田凌
五浦絹子 夏帆
田中嘉雄 東出昌大

ビブリア古書堂の事件手帖 2018.11 角川大映製作 KADOKAWA+20世紀フォックス配給

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