カナダのテレビフィーチャー。
ヒットラーのナチス入党からミュンヘン一揆(第一部)、ナチス復党から総統就任(第2部)までを描いている。
ヒットラーはウィーンの美術学校を受験するが失敗する。
食い詰めたあげく第一次世界大戦に従軍するが、ドイツ・オーストリア枢軸軍は降伏してしまう。
ドイツ軍はロシア革命の影響で共産主義対策に頭を悩ましていた。
そこで左翼政党の主だったところに内偵を放つ。
国家社会主義労働者党(のちのナチス)に潜入したヒットラーは、ミイラ取りがミイラになって党内でメキメキと出世する。
軍の上司だったレーム突撃隊長を利用して、党首の座を奪ったヒットラーはミュンヘン一揆を起こすが、軍に鎮圧され投獄される。刑務所では「わが闘争」をものしていた。
出獄してから景気が良くなり、政治活動はゲッペルスに任せていたが、アメリカが大恐慌を起こして不況になると、ドイツ国内景気は悪化の一途をたどり、外国人(とくにユダヤ人)憎しの空気が助長された。
ヒットラーはここぞと立ち上がり、国民的人気を集め、度重なる解散総選挙の後ついに第一党を獲得して、首相の座に就く。
さらにヒンデンブルグ大統領が亡くなるやいなや、ワイマール憲法を廃止して首相と大統領を統合した総統にまで上り詰める。
ヒットラーが中央政界で力を付けるに当たって、汚れ仕事を一手に請け負ってきたレームや仲間たちをマフィアの殺し合いのように粛清していくところを、端折ったのがもの足りなかった。
西洋人はヒットラーの異常さだけをフィーチャーして満足することが多いが、彼を生み出した土壌について何も語ろうとしない。
何故ナポレオンが英雄でヒットラーが異常者なのか。
ヴェルサイユ条約の苛烈さやナチスの資金源であった英米の資本家をもっと厳しく扱わないのか。
どういう条件が揃ったときに独裁者が登場するのか?(今の日本にその条件は揃っているのか。)
歴史から学ぶべきことはまだまだ多く残されている。
とはいうものの、ロバート・カーライルの演技は特筆ものだ。
独語ではなく英語で喋ると、独裁者のイメージは出ないものだが、007ワールド・イズナット・イナフの木っ恥ずかしい演技とは一転、単なるサイコパスではない説得力ある熱演だった。
最後はお約束のように切り捨てられるピーター・ストメアの突撃隊長も良い味を出していた。
同性愛反対をナチは政策に掲げながら、レーム(ピーター・ストメア)は同性愛者であることを新聞に暴露されて、ヒットラーの覚えが悪くなっていた。
さらにレーム自ら育てた突撃隊を再軍備の際には国軍に採用する計画を持っていたので、第一次世界大戦の空軍エース・ゲーリングや親衛隊長ヒムラーに疎まれて、最後は突撃隊幹部たちとともに粛清される。
しかしなかなか波乱の人生を送ったようで、この男を主人公にして一本、映画を撮りたいと思わせる。
そのときは主演ブルース・ウィリスでどうだろうか。
監督 クリスチャン・デュゲイ
脚本 ジョン・ピールマイヤー G.ロス・マイヤー
音楽 ノルマン・コルベイユ Normand Corbeil
撮影 ピエール・ギル
出演
ロバート・カーライル
ストカード・チャニング
ピーター・オトゥール
ピーター・ストルメア
トーマス・サングスター
ジュリアナ・マルキリーズ
マシュー・モディン
ジェナ・マローン

ヒットラー第1部 我が闘争・第2部 独裁者の台頭 2003 カナダ

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