バルタザールと名付けられたロバがたどる生涯を辿りながら、ピレネー地方に住む人間の業を描いた、ロベール・ブレッソン監督の傑作低予算映画。
ゴダール映画のヒロインの一人、アンヌ・ヴィアゼムスキーのデビュー作である。

あらすじ

校長の娘マリーとジャックは幼いロバをもらい、バルタザールと名付ける。マリーとジャックは将来の約束をしていたが、ジャックの姉が亡くなったことから農園主の父は村を出て行き、農園を失業した校長に貸す。バルタザールも農家に貰われていく。
十年後マリーは美しく成長する。校長はプライドが高く、農園主からの帳簿公開請求に答えず、裁判所から召喚される。校長は裁判所からも退席してしまい、農園の賃借権を失う。親同士が犬猿の仲となってマリーはジャックと距離を置かざるをえない。
パン屋の息子で不良ジェラールをマリーは初め粗野な男に見ていたが、思春期に入り男らしさに惹かれ始めやがて付き合うようになる。
やがてバルタザールはパン屋に所有権が移るが、ジェラールにいじめられる。体の調子が悪くなったバルタザールを引き取ったのはアーノルドだった。酒を止められず酒乱となってバルタザールを虐めて、バルタザールは逃げ出し、サーカスに引き取られる。サーカスでは天才ロバとして人気者になるが、アーノルドに見つかってしまう。アーノルドは殺人の疑いが掛かっていて警察から逃げていたが、ある日警察に取り囲まれる。ところが伯父が亡くなったので、唯一の遺産相続人としてアーノルドを探していたのだ。アーノルドは莫大な遺産を継いで大金持ちとなり、ジェラールとパーティーを開くが、ヘベレケに酔って帰途バルタザールから落ちて頭を強く打ち亡くなる。

競売されたバルタザールは粉挽屋に飼われ、粉挽の重労働を手伝わされる。雨の夜マリーは家にも帰れず粉挽屋を訪ね、一夜を共にする。校長が連れ戻しに来たが、主人は娘は出掛けた後で決まりが悪い粉挽屋はバルタザールを代わりに返す。
マリーは実家に戻り以前と同じ生活に戻る。そこへジャックがやって来て、マリーに再度求婚するもののなかなじゃ受け入れられない。マリーはジェラールたちと決着をつけるため、アジトへ向かうが彼らに襲われ全裸にされ晒し者にされる。そして家を出た娘に悲観した校長も病で亡くなる。
ジェラールたちはバルタザールを連れ出してスペイン国境で密輸を企てるが国境警備隊に銃撃される。彼らは逃げおおせるが、バルタザールは撃たれて、羊の群れの中で死んでしまう。

雑感

ロベール・ブレッソンはストーリーからストーリーの過程をほぼ省略するスタイル。ナレーションもない。出来事だけの抜粋を見せられる。それによって観客に考えさせる映画だ。
ロバ視点の映画だが、もちろん客観的に描いている。初めは優しかったマリーも10年も経つと汚れていき、バルタザールに興味のかけらも見せなくなる。バルタザールはそんな人間の薄情さも見抜いている。

脇役の俳優は素人が多い。

スタッフ

監督・脚本・脚色・台詞 ロベール・ブレッソン
撮影 ギスラン・クロケ
音楽 フランツ・シューベルト 、 ジャン・ヴィーネ

キャスト

少女マリー アンヌ・ヴィアゼムスキー
不良ジェラール  フランソワ・ラファルジュ
マリーの母 ナタリー・ジョワィヨー
先生(マリーの父) フィリップ・アスラン
婚約者ジャック ヴァルテル・グレェン

バルタザールどこへ行く Au Hasard Balthazar 1966 アルゴス・フィルム製作(仏・スウェーデン) アルトス・フィルム配給 ATG国内配給

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