(○)東野圭吾の原作小説を映画化したファンタジー作品。
かつて人生相談を受ける事で有名だった雑貨店に忍び込んだ少年たちが、投函されてきた人生相談の手紙を読んで返事を書くが、次第にこの手紙が32年前のものと知る。

主演は、ジャニーズ事務所アイドルグループ「Hey!Say!JUMP」の山田涼介
共演の雑貨店の元店主役を西田敏行、不動産会社社長に尾野真千子

あらすじ

2012年、静岡県時越(ときごえ)市。ある家を強盗した、養護施設丸光園出身の3人組敦也、幸平、翔太は、その主人である女社長に猿轡をかましたまま逃げた。女社長が丸光園を潰しラブホを建てるという噂を聞いたからだ。

三人は明るくなってから通勤客に紛れて逃げるため、空き家になった「ナミヤ雑貨店」で一晩過ごす。
音がして見に行くと、郵便受けに一通の手紙が入っていた。日付は1980年となっていて、32年前のものだった。相談主の克郎は、音楽家志望の青年だ。
昔、ここの店主は人生相談の名人で多くの人がその返事に救われてきたのだ。もちろん大昔の話である。幸平と翔太が面白がり、適当な返事を書いてそれを牛乳箱に入れる。するとどうだろうか、すぐ反論が届いている。驚いた翔太だが、克郎が甘ったれているような気がして、再び突き放した書き方をする。
それに対して、克郎は怒ってシャッター越しにハーモニカを聞かせる。三人組は、それが女性歌手セリのヒット曲と気付く。この曲を作った人は、火事で焼け落ちる昔の丸光園から、自分の命を犠牲にしてセリの弟を助けたのだ。そこで3人は「音楽を続けるべきだ」という返事を書く。三人組は丸光園出身であることから、何か自分たちと関係があるのではないかと考え始める。

1980年、25歳の女性グリーン・リバーが、父無し子をシングル・マザーとして産むべきかという相談が、ナミヤ雑貨店の店主雄治に届いた。雄治は、「困難さを分かっていて、それでも産みたいなら産めばいい」と答えた。
数ヶ月後、雄治は膵臓癌で余命幾ばくもない体だった。彼は、母子が車で海に落ちて、無理心中したという記事を見つける。死んだのが、川辺みどりという名だったので、グリーン・リバーという相談者だと分かって大きなショックを受ける。そして、彼は「店に連れて行ってくれ」と息子に頼む。

店まで送ってもらった雄治は、息子に遺言を渡す。そこには、自分の33回忌に一晩だけ「お悩み相談室」を復活させて、相談者が相談の後どんな一生を送ったか聞かせてほしいとあった。
店に入った雄治は、32年後(33回忌)の2012年の世界から色々な手紙を受け取った。おおむね好評だったが、母との無理心中事件で生き残った川辺みどりの娘映子からも手紙が届いていた。映子は、丸光園で育った。彼女は、母が心中を図ったと聞かされ自殺を図ったことがある。病院に入院した映子の許へ、友人セリが見舞いに来る。セリは「幸せにする覚悟があって、お母さんはあなたを産んだ」と言い、真実を伝える。昼も夜もシフトを入れて働いていた川辺みどりは、疲労が元で起こした過失事故死だったのだ・・・。

雑感

東野圭吾作品のうち、御涙頂戴映画だが、少し複雑な構造のせいでついていけない人もいるだろう。あまりプロットを複雑にされるのはご都合主義に見えるので、好きではない。
1980年と2012年の間で手紙のやりとりをする話で、悪く言えば韓国映画「イルマーレ」の焼き直しだ。
映画の主張は、「情けは人のためならず」。困っている人間に真剣に接することにより、自分も救われると言うことだ。
西田敏行尾野真千子が好演。しかし主役の山田涼介は、もう少し演技を勉強してほしい。

 

スタッフ

監督  廣木隆一
原作  東野圭吾
脚本  斉藤ひろし
製作  堀内大示、高橋敏弘、松井智、藤島ジュリーK.、飯田雅裕
企画  加茂克也
エグゼクティブ・プロデューサー  井上伸一郎
プロデューサー  二宮直彦、千綿英久
企画プロデュース  水上繁雄
撮影  鍋島淳裕
視覚効果  松本肇
音楽 Rayons
音楽プロデューサー  安井輝
主題歌  山下達郎

 

キャスト

敦也  山田涼介
翔太  村上虹郎
麻生幸平  寛一郎
田村晴美  尾野真千子
田村秀代  吉行和子
松岡克郎  林遣都
皆月暁子  成海璃子
セリ  門脇麦/(少女時代)鈴木梨央
映子  山下リオ
刈谷  手塚とおる
皆月良和 PANTA
松岡健夫  小林薫
浪矢貴之  萩原聖人
浪矢雄治  西田敏行

 

***

一方、2012年に戻って敦也、幸平、翔太の3人組は「迷える子犬」から相談を受ける。その内容を読んで、敦也は返事を書く。
1980年を生きる「迷える子犬」こと田村晴美は、丸光園出身だった。けれども、大叔母夫婦に引き取られて、幸せな生活を送っていた。それでも大叔父が動けず要介護になり、借金を抱えるようになる。昼は事務員、夜はホステスとして晴美は働いたが、それでも借金は貯まる一方だ。愛人契約を持ちかけられた晴美は、松岡克郎から「ナミヤ雑貨店が悩み相談をやっている」と聞いて、手紙を投函した。
敦也の回答は「愛人になるな。私の言う通りに動け」と前置きして、数年後バブル景気が起きるので、小さなマンションを買って、高くなったら売れ。その儲けを元手にもっと大きなマンションを買って、高くなったところで売る、不動産や経済を勉強して株式投資をしろ、1988年を境に景気は悪化するので、手仕舞いしろ、というものだった。

1980年の晴美はこの手紙の通りに動き、バブルの成功者となる。幼少期に育った丸光園にも、たびたび立ち寄り手伝いをしました。
2012年になると丸光園の経営を刈谷が仕切っていた。だが、刈谷は丸光園の財産を横領していた。それを知って晴美は丸光園を買収して、施設の子たちを救おうと考える。それが、いつの間にかラブホに建て替えるという話になってしまう。三人組は、施設の子たちに勉強を教えに行き、この噂を耳にする。敦也たちは、最近よく丸光園にやって来る不動産業者・晴美がラブホを建てると考え、彼女の家から金品を強奪することを思い付いた。

ようやく「迷える子犬」が、現在の田村晴美と気づいた三人組は、勘違いをしていたことに気付く。彼らは、襲った家に向けて走り始める。
田村晴美の家には、被害者田村晴美に警察が事情を聞いていた。そこに三人組が現れる。

(エンドロール)三人組は、刑事事件を取り下げてもらった上で、晴美と和解したのだろう。晴美は新たな丸光園の経営者となり、その手腕を発揮していた。敦也は理学療法士として、幸平と翔太も航空整備士や料理人として、それぞれの道を目指していた。

 

ナミヤ雑貨店の奇蹟 2013 製作委員会 松竹+KADOKAWA配給 東野圭吾ファンタジー小説の映画化

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