1860年ごろのコロラド州を舞台に、暗黒の西部開拓史を描く秀作映画
製作総指揮を「ひまわり」のジョセフ・E・レビンで、セオドア・V・オルセンの小説をジョン・ゲイが脚色し、「野のユリ」のラルフ・ネルソンが監督をした作品。
撮影はロバート・ハウザー。主題歌はバフィ・セイント・マリー
主演はキャンディス・バーゲンと新人ピーター・ストラウス
共演はドナルド・プレザンス、ジョン・アンダーソン
色彩はテクニカラーでパナビジョン作品。

あらすじ

クレスタは、ニューヨークからフィアンセのもとに嫁ぐ直前、シャイアン族に襲われて、酋長まだら狼の愛人になった。もともと彼女は自由な性格だったので、シャイアン族との生活も楽しかった。しかし文明社会に未練があり、彼らに別れを告げて白人保安官に保護を求めた。

彼女を砦まで護衛する騎兵隊22名は金を運んでいたため、シャイアン族に襲撃される。生き残ったのはクレスタ以外では新兵ホーナスだけだった。二人は騎兵隊の駐留する砦まで何日も歩かなければならなかった。

インディアンについて二人の意見は対立する。クレスタは「白人はインディアンの土地を奪っている」というのに対して、ホーナスは自分の父がインディアンに殺されたから騎兵隊に入ったと言う。

ホーナスは水場で靴下を脱いだのを忘れる。取りに戻るとカイオワ族に出会って捕まってしまう。クレスタは機転を利かし一対一の決闘を申し込む。もちろん戦うのは、ホーナスだ。もしホーナスが負けたら、クレスタは犯されて二人とも殺されてしまう。ところがホーナスが間違って勝ってしまい、解放される。

食料が尽きたところでクレスタが野生のヤギを見つける。ホーナスが撃つが、外れて奥にいたウサギに当たる。久しぶりに食料にありついた。クレスタは食後に盛大なゲップを連発して、ホーナスに嫌がられる。

ホーナスは、すれ違った武器商人イサックの何十丁もある銃をインディアンに売るためのものだと知ると、全て燃やしてしまう。しかしホーナスは、怒ったイサックに追われて脚を撃たれる。クレスタは歩けなくなって気を失ったホーナスを看病する。目を覚ましたホーナスは、クレスタの女らしい一面を見て愛するようになる。

安全な洞窟に負傷したホーナスを匿って、クレスタは一人で騎兵隊の砦に助けを求めに行く。クレスタはそこで元フィアンセから、アイバーソン大佐が騎兵隊襲撃の報復のためシャイアンの集落を襲うことを知らされる。

クレスタは、シャイアン族を救おうと、馬を盗んで集落に急ぐ。入れ違いにホーナスは、馬を見つけて自力で砦に到着する。彼は大佐に武器を持たないシャイアンを攻撃しないように上申するが、あっさり却下される。

アイバーソン率いる一隊は、シャイアン族の集落に襲いかかり、一方的に彼らを屠る。クレスタの目の前で非戦闘員であるインディアン女が犯された後、殺された。
新兵ホーナスはそれを見て愕然とした。正義の味方と思っていた騎兵隊が、強盗と変わらなかったのである。彼は戦闘を放棄したおかげで、反逆罪で捕らえられた。
戦闘の終了後、縛られて馬車に引かれているホーナスは、解放されたクレスタとやっと再会できた。絞首刑になる覚悟のホーナスは、クレスタに向かって、ニヤリと笑うのだった。

雑感

前半がロードムービーを思わせる、どこか牧歌的な雰囲気だっただけに、後半に騎兵隊が現れてからの落差が激しすぎる。
特に独立製作・配給作品なのに色彩はかなり綺麗にリマスターされていた。
上映時間最後の20分間は阿鼻叫喚の非戦闘員殺戮シーンだった。女子供の首が飛んだり、犯された上に刺し殺されたり、目を背けたくなった。
もちろん好戦的な種族もいるから、白人だけが一方的に悪いわけではないが、どっちもどっちだ。
その割には白人は、ネイティブ・アメリカンに対して悪意を持って描いてきたところが確かにある。それだけにこの映画は当時センセーショナルに受け止められたのだ。

史実はコロラドに金鉱が見つかり、1861年に採掘に邪魔なネイティブ・アメリカンを移住させようとした。狭い土地に押し込められた彼らは抵抗運動を見せて、しばしば開拓民の住む地域を襲っていた。コロラド州では知事やマスコミが先導してインディアン絶滅運動(ジェノサイド)を州是とした。3年ほど経って大賢者であるシャイアン族のブラック・ケテル酋長が和平を求めて交渉に入る。ところがシヴィングストン大佐は突然サンド・クリークの居留地を包囲して襲い、女子供の非戦闘員を含めて何百人もの大虐殺を行なった。1864年11月29日のことである。
連邦議会ではシヴィングストン大佐の攻撃が問題となり、軍事法廷に立たされ、失意のうちに亡くなる。しかし彼の行為は北軍によって英雄視されて、独立戦争後カスター将軍が登場してネイティブ・インディアンの激しい怒りを買うことになる。

ベトナム戦争で1968年に起きたソンミ村虐殺事件はゲリラ掃討を目的としながら、女子供を虐殺して生存者はわずか3名だった。1970年3月米陸軍の査察が入って、将校14名が一旦解任された。

この映画の公開当時、世間で騒がれていたこのソンミ事件にいち早く目をつけた製作陣はこの映画をこの事件の比喩として使った。

キャンディス・バーゲンは女優だけでなく製作者や写真家でもあり知的な面が強いが、この映画ではドリス・デイ風に演じている。しかしパンツを履くと暑いと言って脱ぎ捨て、尻を丸出しにして寝ているシーンがある。かえってそそらないのだ。

ソルジャー・ブルー」の意味は、いつでも救援に来てくれて助けになる騎兵隊なのだが、ホーナスくんにとっては憂鬱な騎兵隊だっただろう。

スタッフ

製作総指揮ジョゼフ・E・レヴィン
製作ハロルド・ロブ、ガブリエル・カッカ
監督ラルフ・ネルソン
脚色ジョン・ゲイ
原作セオドア・V・オルセン
撮影ロバート・ハウザー
音楽ロイ・バッド
主題歌バフィ・セイント・マリー「ソルジャー・ブルー」

キャスト

クレスタ  キャンディス・バーゲン
ホーナス  ピーター・ストロース
アイザック  ドナルド・プレゼンス
酋長まだら狼  ホルヘ・リベロ
アイバーソン大佐  ジョン・アンダーソン

 

 

ソルジャー・ブルー Soldier Blue 1970.8 アブコ・エンバシー・ピクチャーズ製作・配給 1971年日本公開

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