オペラで有名な「カルメン」の15回目の映画化。監督は「ギルダ」「アンデルセン物語」「情欲の悪魔」「武器よさらば(1957)」のチャールズ・ヴィダー、主演はリタ・ヘイワース(スペイン系で本名マルガリータ・カルメン・カンシーノ)とグレン・フォード
監督と主演の二人は、ヒット映画「ギルダ」(1946)でもコンビを組んだ。

 

 

あらすじ

19世紀初頭バスク地方の北部ナバーロからはるばる竜騎兵ドン・ホセが、スペインのアンダルシア地方セビージャに赴任してきた。
ホセは煙草工場で働く女たちの争いを発見して、相手を傷つけたカルメンを逮捕するが、色目を使われて、逃がしてしまい、大佐である上官から一か月宿直を申し付けられる。
ある夜ホセは、カルメンが舞踏会へ入るのを見る。カルメンは上官の情婦だったのだ。ホセがカルメンの部屋に行くと、上官が入ってきて決闘となり、カルメンが足を引っ掛けると、上官は躓いてホセの剣に突き刺さって死ぬ。
指名手配されて賞金首となったホセは、カルメンとその密輸仲間と行動を共にする。
ところが、そこへカルメンの本当の夫ガルシアがやって来る。
再び、ホセはガルシアと決闘になるが、今度は自身の力だけでガルシアを殺す。
その頃、カルメンの心はホセから離れて、闘牛士アンドレスに向いていた。ホセは嫉妬の炎をたぎらせて闘牛場に向かい、カルメンを連れ戻そうとする。二人がもみ合っている背後から、ガルシアの手下により密告を受けた警察が二人を狙撃する。

 

雑感

ドン・ホセはバスクの一地方であるナバーロの出身であり、カルメンはロマーノ(ジプシー)である。つまり二人ともスペインにとって異邦人なのだ。そういう被差別感や孤独が、原作や映画の通奏低音をなしている。

プロスペル・メリメの原作に基づき、ビゼーの作曲したオペラ「カルメン」の要素を加えている。
・原作ではドン・ホセからの聞き書きの形式を取っているが、オペラも映画もその辺りは省略される。
・ドン・ホセの婚約者ミカエラがオペラで重要な役どころだが、原作と映画では一切出てこない。
・上官を殺して逃亡するのは、原作に倣っている。オペラでは上官と決闘になりかけるが、カルメンの悪党仲間がやって来て上官を連れ去る。
・カルメンの情夫ガルシアは原作と映画に存在するが、オペラでは省略された存在である。
・原作では最期にホセはカルメンを刺殺して逮捕され、ギャレットと呼ばれるスペイン独特の縊殺刑で処刑される。オペラでは刺殺するところで終わる。映画では、二人とも狙撃により銃殺される。

リタ・ヘイワースの父はスペイン・セビージャ出身であり、本人もミドルネームにカルメンと付く。従って本人がこの企画に乗り気になり、共同製作となったと思われる。ただし、ドン・ホセ役にグレン・フォードを再び呼んだのは、チャールズ・ヴィダーかな。カナダの初代首相の家系であるグレンにラテン系の役は合わなかった。おかげで儲からなかったようだ。

スタッフ・キャスト

監督 チャールズ・ヴィダー
原作 プロスペル・メリメ 『カルメン』
脚本 ヘレン・ドイッチュ
音楽 マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ
撮影 ウィリアム・E・スナイダー
編集 チャールズ・ネルソン
制作 チャールズ・ヴィダー、リタ・ヘイワース (ノークレジット)

配役
カルメン   リタ・ヘイワース
ドン・ホセ グレン・フォード
闘牛士アンドレス  ロン・ランデル
情夫ガルシア    ヴィクター・ジョリー
大佐    アーノルド・モス

カルメン The Loves of Carmen 1948 コロンビア配給 リタ・ヘイワース、グレン・フォード主演

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