実話を基に、将来有望とされながら夭逝した黒人のアメリカン・フットボール選手アーニー・デイビスの人種の壁を乗り越えた活躍を描いたスポーツ映画。
監督はゲイリー・フレダー
主演はロブ・ブラウン、デニス・クエイド

あらすじ

1950年代、アメリカでは黒人差別がまかり通っている。幼い頃から俊足だったアーニーは、アメリカン・フットボールの少年クラブに参加して、頭角を現わす。高校でもアメリカン・フットボールを続けていると、名門シラキュース大学 ヘッドコーチのシュワルツワルダーが訪れる。コーチはチームのスター選手ジム・ブラウンがNFLクリーブランド・ブラウンズに入団したことで、彼に変わる新人を探していた。
シラキュース大学にスポーツ推薦で入学し、フットボール部に属したアーニーは、ジム・ブラウンの付けていた44番を付けることになる。最初の一年目こそチーム内部での人種間の葛藤や女性関係に悩む。
しかし2年になった秋から、レギュラーを張りリーグ戦無敗で勝ち抜け、黒人差別の強い町ダラスで行われるコットンボウルにチームと共に招待される。相手は白人のみのチームであるテキサス大学であり、悪質なファウルにより第3クォーターは退場してしまう。しかし第4クォーターは復活して、見事ロングランを決めてシーズン全勝で全米優勝を果たす。アーニーは「エルマイラ特急」という称号が与えられた。
そして、アーニーはカレッジ・フットボール最高の名誉であるハイズマン・トロフィー(黒人初)を受賞する。1962年、4年生を終えてクリーブランド・ブラウンズと契約も決まり、彼の人生は順風満帆かと思われたが…。

 

雑感

「タイタンズを忘れない」「しあわせの隠れ場所」などと同列の黒人アメリカン・フットボール映画である。

アーニーは当時のフットボールらしく、マルチ・スポーツをやっていたが、特に高校時代は野球もやっていた。フットボールでの本職はRBだったが、野球が出来ることからWRもやった。だからFBではなく、QBの横にいるHB(ハーフバック)のタイプだった。映画を見ているとカレッジ・フットボールならではのロングランを連発していた。

公民権運動と重なった時期であったため、黒人差別について敵味方どちらからも攻撃された。味方は活躍して勝ちさえすれば、そのうち文句は出なくなる。しかし相手チームは負けると、ますます汚いファウルをするようになる。RBは故障しやすいポジションだから、よほど俊敏に逃げたんだろう。

なお、アーニーの3年生はバスケと並行してプレイし7勝2敗に終わり、4年生では8勝3敗だったが、フィラデルフィアのリヴァティ・ボウルに選出されてマイアミ大を15−14で下している。                                        
もしかしたら、早熟でありクリーブランドに入っても成績は収められなかったかもしれない。

俳優ではデニス・クエイドが渋い芝居を見せてくれた。心のどこかに黒人差別の気持ちを隠しながら、彼らと共に戦う姿勢が良かった。ハリソン・フォードがやるよりもずっと良い。「エニー・ギブン・サンデー」の主将役だったから監督役もハマると思っていたが、ピッタリだ。

日本語のDVDタイトルは「エクスプレス」の予定が、ラグビー映画「インビクタス/負けざる者たち」が上映されたので、売るために合わせて「エクスプレス/負けざる男たち」となった。お陰様で余り売れなかった。

スタッフ

監督 ゲイリー・フレダー
脚本 チャールズ・リーヴィット
原作 ロバート・ギャラガー
製作総指揮 デレク・ドーチー、アーン・L・シュミット
音楽 マーク・アイシャム

 

キャスト

アーニー・デイヴィス – ロブ・ブラウン
HCシュワルツワルダー – デニス・クエイド
先輩ジム・ブラウン – ダリン・デウィット・ヘンソン
同僚ジャック・バックリー(JB) – オマー・ベンソン・ミラー
従兄弟ウィル・デイヴィス・ジュニア – ネルサン・エリス
祖父ウィル・”ポップス”・デイヴィス – チャールズ・S・ダットン
恋人サラ・ワード – ニコール・ベハーリー
母メアリー・デイヴィス – アーンジャニュー・エリス

 

ネタばれ

入団前の検診で白血病に罹っていることがわかり、キャンプから療養生活を余儀なくされる。
アーニーは、一度ファンの前に顔を見せて歓声を受けるが、そこからは悪化し結局1963年春に亡くなる。
一度も袖を通さなかった、彼のユニフォームの背番号45番は、ブラウンズの永久欠番となった。

 

 

 

エクスプレス/負けざる男たち The Express 2008 デイビス・エンタメ製作 ユニバーサル配給 (日本未公開)米国カレッジ・フットボールの英雄を描いた黒人映画

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