ボンカレーのCMお姉さん松山容子は松竹所属のテレビ・スターとして活躍していたのだが、特に時代劇映画にも進出した。
大映の座頭市が受ける時代だったので、三十路を過ぎて貫禄がついてきた頃、松竹の女座頭市として売り出した。
第一作は「真っ赤な渡り鳥」というタイトルで、めくらのお市「誕生秘話」を知ることができる。「めくらのお市物語というメインタイトルは後から付いた。
この作品は血飛沫は上がるのだが、以前の松竹らしい作風に見えた。

あらすじ

「めくらのお市」は幼い時に男と逃げる母に捨てられ、雷に打たれて視力を失う。奇特な老人弥助に助けられるが、その仁平も顔見知りのヤクザ伝蔵に斬られて殺された。彼女も伝蔵に襲われるが、助けてくれたのが用心棒を家業とする浪人浮田だった。それからお市は護身術として、浮田に居合術を仕込まれた。しかしある日、護身のためといえ、男を斬ってしまい、それ以来浮田が消えた。
それからお市は、母と伝蔵追討の旅に出た。上州に向かうと、仁平という、役人から追われる身の老人と出会う。生まれた時に別れた娘およねをやっと見つけたおよねは女郎としてたたき売られる運命だった。
お市は、彼女の身受けをするため、上州屋の賭場に上がった。お市は政五郎親分とサシの勝負をしたが、好敵手お文が4個のサイコロを使ってイカサマをしたのを、見破った。帰途、お文に襲われるが、難なく退ける。
一方、仁平は上州屋の土蔵に忍びこんだ。するとおよねは伝蔵にすでに刺殺されていた。待受けていた伝蔵は仁平も斬った。伝蔵は仁平、弥助と街道を荒し回った盗賊だったが二人を売って、豪商庄平衛になりすましていた。過去が露見することを避けるために昔の仲間を続けて殺したのだ。
その頃、お市は政五郎の女房お浜に、賭場で稼いだ金でおよねを自由の身にしてやろうとした。お浜はお市が実の娘であることに気付くが、何も言えぬまま彼女を土蔵に案内した。しかし、およねも仁平も殺されていた。浮田から事情を聞いたお市は伝蔵と決闘場所へ急いだ。お市の居合は伝蔵の忍びの術を打ち破り、弥助、仁平、およねの恨みを晴らすことができた。

雑感

育ての父を殺した仇敵を倒す話と実の母を恋うる話のミックスだ。
時代劇離れしている東映ではこんな話を放映しなくなったが、伝統的プロットである。
それを無難にこなした松山容子はこの作品をシリーズ化して、第四作まで作る。

その一方、テレビドラマ「旅がらすくれないお仙」で若いお色気担当の大信田礼子と共に一年間主役を張り、大河ドラマ「天と地と」の裏番組として大奮闘した。
映画シリーズが終了した「めくらのお市」はテレビドラマとなった。

松山容子は1971年に「めくらのお市」の原作漫画家棚下照生と結婚して事実上引退する。大塚食品はそれでも長くボン・カレーのコマーシャル・キャラクターとして使った。その後1980年代に復帰するが、最後引退する。

 

 

スタッフ

製作 斎藤次男
原作 棚下照生
脚色 高岩肇 、 宮川一郎 、 鈴木生朗
監督 松田定次
撮影 川崎新太郎
音楽 鏑木創

キャスト

お市  松山容子
浮田重兵衛  長門勇
釣り独楽のお文  荒井千津子
半次  柳澤愼一
母お浜  富永美沙子
仁平  多々良純
親代わりの弥助  河野秋武
伝蔵  天津敏
政五郎  山村弘三
およね  北口千春

めくらのお市物語 真っ赤な流れ鳥 1969 京都映画制作 松竹配給

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