イランの砂漠の宮殿に集められた10人が交通を遮断された中でマザーグース童謡「10人のインディアン」の歌詞に合わせて殺されてゆくサスペンス映画
アガサ・クリスティのベストセラー小説「そして誰もいなくなった」の映画化である。
監督はピーター・コリンソン、製作はハリー・アラン・タワーズ。タワーズはピーター・ウェルベック名義で脚本も執筆した。
タワーズは1965年に同じ原作で「姿なき殺人者」として映画化している。さらに1989年にも「サファリ殺人事件」(原題は三作全てTen Little Indians)として3度目の映画化を果たした。
主演はオリヴァー・リード、エルケ・ソマー
共演はリチャード・アッテンボロー、ハーバート・ロム
他ヨーロッパを股に掛けた超豪華俳優たち!

あらすじ

大型ヘリで将軍サルヴェ、女優のイローナ、医師アームストロング、歌手ミシェル、秘書ヴェラ、ヒュー、判事キャノン、刑事ブロアの8人が砂漠に聳える宮殿に降り立つ。
彼らを迎えるのは、宮殿の召使い夫婦であるオットーとエルサである。彼らは、召使いを含めお互いに初対面だった。
招待主が現れず、招待理由がわからないまま、晩餐会が始まった。テーブルには十体のネイティブ・アメリカン人形が置かれている。
ミシェルが、ピアノを弾いていると、「私はU・N・オーエン」と語る声が聞こえる。その声は、召使いを含めた10人の過去の暴き出した。将軍は部下5名を死なせて、女優は夫を殺し、医師は手術ミスで一人を死なせて、判事は無実の人間に死刑判決を下し、秘書は妹の婚約者を殺して、ヒューは妊娠した婚約者を殺し、歌手は二人をはね殺して、刑事は偽証で無実の人間を獄死させ、召使い夫婦は雇い主を殺した。皆は青ざめ出す。
罪を告白したミシェルが突然倒れた。酒に毒が入っていたらしい。人形が一体割られていた。人々は恐怖に慄く。
翌日は、召使いの妻が砂漠で絞殺死体として発見された。ペルシャ人がかつて行った処刑方法だった。オーウェン氏はどこかに隠れているのか?残ったみんなで家探しが行われた。しかし将軍が殺される。
次の日には召使いの夫の方が逃げ出したが、やはり砂漠の真ん中で殺される。
さらに女優も罪を告白した後、部屋で殺される。
マザーグースの歌通りに殺人が行われた。今や生き残っているのは判事、医師、刑事、秘書とヒューだけになった。その頃にはオーウェン氏がどこにいるかでなく、誰がオーウェンかが問題だと気付いていた。
そして夜中に判事が部屋で射殺される。四人は疑心暗鬼に駆られてしまった。翌朝、まず医師が消える。どこかに隠れているのか?ブロアが次に突き落とされて死ぬ。さらに医師の遺体も発見される。
遂にヴェラとロンバートの二人だけが残った・・・。

雑感

館でのサスペンス映画
プロデューサーのハリー・アラン・タワーズは、同じシナリオを同じタイトルで三度も映画化している。舞台も原作の孤島、前作の雪山からイランの砂漠に変わっている。
そしてオリヴァー・リードの役名を原作のフィリップからヒューに変更している。
ロケ地は革命前のイランとスペインのマドリッド、アンダルシア。

この作品は、「姿なき殺人者」の脚本とほとんど同じだが、前回の白黒画面よりカラー映像の方が良い人は、この作品を選ぶべきだ。
あるいはドイツのエルケ・ソマーお色気が好きな人もカラー向きだ。

もちろん、フランスの歌手シャルル・アズナブールが出ている映画なら何でも見たい人にも、おすすめ。かつてトリュフォー監督の「ピアニストを撃て」に主演した俳優であり大歌手が、映画が始まってすぐマザーグースを歌った途端、毒殺される役なのだから、驚くだろう。

但し、この作品は小説を原作にしているのでなく、アガサ・クリスティが小説の元にして書いた舞台戯曲を原作にしており、原作小説と違いハッピーエンドを迎える。1945年のルネ・クレール監督作品がこの脚本を元にして作られた映画のうちで最も素晴らしい映画だ。タワーズの三作品は俳優の顔ぶれが良いが、作品としての出来は落ちる。

ブルーノ・ニコライの音楽は当時の流行のものだが、懐かしく感じるだろう。

 

スタッフ

監督ピーター・コリンソン
脚本ハリー・アラン・タワーズ(ピーター・ウェルベック名義)、アンリケ・ジョヴェ(クレジットなし)
原作アガサ・クリスティ
製作ハリー・アラン・タワーズ
音楽ブルーノ・ニコライ
撮影フェルナンド・アリバス

キャスト

* 歌手ミシェル:シャルル・アズナヴール
* 女優イローナ:ステファーヌ・オードラン
* 秘書ベラ:エルケ・ソマー
* ブロア刑事:ゲルト・フレーベ
* アームストロング医師:ハーバート・ロム
* ヒュー・ロンバード:オリヴァー・リード
* キャノン判事:リチャード・アッテンボロー
* 召使いの妻エリザ・マルティーノ:マリア・ローム
* 召使いオットー・マルティーノ:アルベルト・デ・メンドーサ
* サルベ将軍:アドルフォ・チェリ
* U・N・オーウェン:オーソン・ウェルズ (テープの声)

ネタばれ

秘書ヴェラは、ヒューが犯人だと思い、撃ってしまう。
彼女は一人で館に戻ると、殺されたはずの判事が玉突きをしていた。彼は余命幾ばくもなく、九人の死刑になるべき人間を道連れにしようと計画したのだ。彼は、秘書が首を吊るための輪を用意したが、秘書の後ろからピンピンしたヒューが現れた。既に毒を飲み干した判事は驚きの表情を見せて亡くなった。

判事は、医者に味方だと信じ込ませて、隙を突いて殺したのである。

 

秘書ヴェラは、妹の婚約者を殺したのではなく、殺したのは妹だった。そしてヒューは、実はヒュー・ロンバートでなく彼の親友だった。ロンバートが自殺した後で、ヒューは招待状が机の中に仕舞ってあるのを見て、自殺との関係を調べたのだ。
二人は、もうすぐやって来る予定のヘリを待つのだった。

 

 

 

 

 

そして誰もいなくなった Ten Little Indians/And Then There Were None 1974 英フィリバスター製作(英独仏伊合作) エンバシー・ピクチャーズ配給 インターナショナル・プロモーション(IP)国内配給(1981)

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