山村聰の痴態をゲラゲラ笑いながら見ていたが、最後は身につまされる映画だ。

谷崎潤一郎の晩年代表作を職人木村恵吾監督が映画化。

老人の性欲脚フェティシズムがテーマ。

多少冗長で盛り上がりに欠ける作品だが、かえってそこがリアルで怖い。

 

Synopsis:

卯木督助は77歳になり心臓が弱くて不能なのだが、性欲はまだ強く、嫁颯子の姿を眺めているときが一番興奮する。颯子もそれは十分に感じており、督助の言うことを聞いてあげる代わりに、お金をもらっている。颯子は踊り子上がりで夫の興味は若い踊り子に移ってしまい、督助の金だけが颯子を卯木家につなぎ止めていた。

浴室は体の不自由な督助の寝室からも入りやすいように作られており、颯子は脚をなめさせてあげる。その代わりに、彼女が愛人を連れ込むことを黙認させる。

督助は寝室で颯子と二人きりになると、首筋にキスを始める。颯子はそれをネッキングと呼び、代償として300万円の猫目石(キャッツアイ)を手に入れる。

墓地を求めて督助は颯子と京都へ行った。そこで仏足石を作るアイデアが督助に湧く。どうせなら仏様より颯子の足裏を拓本にとって、自分の墓にすれば、死んでも颯子に踏まれて幸せに違いないと思い、颯子に取らせてもらうが、なかなか上手く行かない。つい熱中するうちに、倒れてしまう。

東京に帰ってから、医者に診せるが、あれだけ心臓が弱っているのに、死なないのが不思議と家族に向かって言う。督助は今、庭をプールにして颯子の水着姿を毎日見られるのが楽しみで仕方がない。

 

 

 

これを見て、おそらく若くて介護を経験していない人は、「普通こんなことはあるはずがない。きっと谷崎潤一郎は変態に違いない」と考えるだろう。でもそれは、その人が将来、精も根も尽き果てた貧乏老人になるだ。

またこれが自分の真実の姿だと判っている中高年は露悪趣味に見えるかも知れない。

金持ちの老人は妻を亡くすと、こうなることがある。
うちの祖父がそうだった。まだ祖母は生きていたが植物人間であり、爺は家政婦に色情を湧かせて追いかけ回していた。家政婦も遺産が欲しいものだから、するに任せている。させると言っても、老人はインポテンツなのだから、実害はない。

けれど、お国から勲章をいくつももらった男の最後の姿がこうだと誰が知ろう。

我々は遺産にあたらなかった負け組で、家政婦をあてがった長女と家政婦がほとんどの遺産を生前贈与で持って帰ってしまった。

だからこの映画を見ていると、谷崎がどこまで正気で書いていたのか、判らない。それぐらい真に迫っている。

実際、谷崎の妻松子の連れ子の嫁千萬子が、若尾文子が演じた颯子のモデルである。佐々木看護婦にもモデルがいる。

 

 

 

 

 

監督 木村恵吾
製作 永田雅一
原作 谷崎潤一郎
脚色 木村恵吾
企画 藤井浩明
撮影 宗川信夫
音楽 小川寛興

 

 

出演
主人公(卯木督助) 山村聡
妻 東山千栄子
息子浄吉 川崎敬三
息子の妻颯子 若尾文子
娘五子 村田知栄子
娘陸子 丹阿弥谷津子
嫁の愛人春久 石井竜一
看護婦佐々木 倉田マユミ

 

瘋癲老人日記 1962 大映  色ボケジジイの日記

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