一度は故郷の青森五所川原を捨てた女が、ヤクザの抗争に巻き込まれて逃げる男を連れ、再び津軽に戻ってくる。女は事故で亡くなった父と兄を弔うために奔走するが敵わない。一方、男は津軽の海に新しい人生を見つける。女は去り、男は残るが運命は皮肉だった。

斉藤耕一監督が国鉄の”Discover Japan” ブームを背景にして、望郷映画をカメラワークに拘って撮った。もちろんメジャー資本に受け入れられるわけもなく、ATGとの共同製作だ。
主演は江波杏子織田あきら(新人)であり、中川三穂子が共演。
キネマ旬報日本映画1973年第一位、日本映画監督賞主演女優賞(江波杏子)の三冠を手にしている。

なお津軽じょんがら節は、映画の最初と最後に演奏シーンが出てくるだけだ。おそらく津軽が二人にとって安住の地でなかったように、本物の津軽じょんがら節はもう聞けないと言いたいのだろう。でも津軽じょんがら節の復活は、この映画のおかげもあった気がする。同年から高橋竹山の渋谷ジャンジャンでの公演が始まり、敏感な若者がじょんがらに興味を持つようになったのだ。

あらすじ

東京のバーで働いていたイサ子(江波杏子)が徹男(織田あきら)を連れて故郷の五所川原に帰って来た。ヤクザの徹男は他の組のヤクザを刺したために逃亡中の身で、イサ子は漁で死んだ父と兄の墓を死亡保険金で建てるつもりだった。
浜辺での二人の生活は単調だった。イサ子は飲屋で働き始める。その間、徹男は暇潰しに盲のユキ(中川三穂子)と遊んでいた。
イサ子の父と兄は保険金詐欺のためシケの海で船を捨てて小舟で帰る途中に遭難したと保険会社に判断されて保険金の支払いは拒否された。嫌気がさした彼女は村を出ようと決心するが、懐いているユキとの平凡な生活に楽しみを見出した徹男はこの村に留まる。イサ子は徹男に「ふる里が見つかって、よかったわね」と一言残して都会へ去った。そしてある日、徹男は東京から送り込まれた殺し屋に暗殺された。

 

雑感

初めに暗い津軽の海が映され、やがてイサ子(江波杏子)真っ赤なコートを着て現れる。如何にもカメラにうるさい斎藤監督の趣味だ。津軽出身のイサ子が結局津軽に染まれず都会に戻ることを暗示している。一方、黒いヤクザスーツで現れた徹男(織田あきら)の方は津軽になじむが、東京のヤクザがそれを許さなかった。津軽の景色は灰色なのだ。

江波杏子は女優になるべくして女優になった人だ。しかし76才で亡くなった。女性の平均年齢からすると早すぎる。ご冥福をお祈りする。

織田あきらは、この映画でデビュー後、ドラマ「Gメン’75」の悪役などで活躍し、1988年に引退している。その後は活動していないようだ。この映画の演技は地だったと思う。逆に言えば不器用な人だった。

東大文学部卒の佐藤英夫がスケベな呑み屋の親父役で出演。「チャコちゃん」シリーズの二代目パパとしてお茶の間でも人気があったが、その裏でこんなアルバイトをしていたとはw。

スタッフ

監督 斎藤耕一
製作 島田昭彦 、 多賀祥介
脚本 中島丈博 、 斎藤耕一
撮影 坂本典隆
音楽 白川軍八郎 、 高橋竹山

 

配役

イサ子  江波杏子
徹男  織田あきら
ユキ  中川三穂子
豊  寺田農
ユキの祖母  戸田春子
ユキの母  東恵美子
金山  佐藤英夫
塚本  西村晃

 

 

津軽じょんがら節 1973 ATG+斎藤プロ – 追悼・江波杏子さん

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