1939年の映画「狸御殿」から始まった木村恵吾原作・脚本・監督の時代劇オペレッタ「狸御殿」シリーズ。その2作目「歌ふ狸御殿」を見た。役者が時代劇風の狸に扮し、歌あり舞踊ありの楽しい作品だった。

第1作の「狸御殿」(1939.10、新興キネマ)カルト作品として近年話題の「鴛鴦歌合戦」(1939.12、日活京都)より早く上映されている。当時の京都の撮影所は、戦争がごく身近に近づき、カッ飛んだ映画でも作らないとやり切れない気分だったのだろう。なお初代「狸御殿」のフィルムは残っていないそうだ。

ところがその3年後の1942年、新興キネマ、大都映画、日活の制作部門が国策により合併して大映(大日本映画)となり、11月には大映京都太秦撮影所の制作で狸オペレッタの新作「歌ふ狸御殿」を上映した。主演は前作に続き高山廣子、母狸役を芸者歌手の豆千代、姉狸役を草笛美子、若殿狸を宮城千賀子が演ずる。原作、脚本、監督は前作と同じく木村恵吾である。音楽面では作曲古賀政男、作詞サトウハチローという黄金コンビを起用して、コロムビアから歌手である楠木繁夫、伊藤久男、三原純子らが映画出演している。楠木繁夫はこの作品で三原純子と結婚した。

今から考えると、7月にミッドウェー海戦で空母を4隻も沈められているのに、呑気なものだ。おそらく政府は息抜きさせて国民の関心を戦争から目を逸らしたかったのだろう。

あらすじ

雌狸のお黒は、かちかち山で死んだおとっつぁんの墓参を欠かさない。お黒は家に帰ると養母のおたぬ義姉のきぬたにいじめられて、下働きをさせられている。きぬたにドングリ林の栗助という雄狸との見合いをおたぬに勧められるが、きぬたは歌しか能がない男は嫌と断る。彼女は上昇志向の強いタイプだ。そんなことも知らずに今日も町では栗助が美声を聞かせている。そしてきぬたは、媚びる妹に腹を立てて森の音楽会に出て行く。

白木蓮の木の下に河童のプク助が現れる。彼はきぬたのことが好きだったが、もちろん相手にされていない。夜が嫌いなプク助はひとり寂しく唄っている。

森の音楽会へ行くと、茂林寺のお福一派が腹鼓を打って盛り上がるが、きぬたは腹鼓は下品で所詮は文福茶釜の子孫だと言いすてる。お福は反論するが、理屈できぬたに掛かっては相手にならない。

おたぬはお黒に鳥を捕まえてこいと言われるが、お黒は銃声に驚いて鳥を取り逃がしてしまう。お黒は鳥なしでは家に帰れないとおとっつぁんの墓前で一晩過ごす。そこに白木蓮の精が現れ、お黒の姿に気づく。

そのときマサカリで木を切る音がして、白木蓮の精は急に苦しみだした。

それもプク助が木を切っているのをお黒が止めたおかげで、白木蓮の精は助けられた。

その夜、お黒が眠っているところに白木蓮の精はやって来て、美しい姫にしてあげるからさぎり姫と名乗ること、暁の鐘が7つ鳴ると魔法は解けることを告げる

目覚めると果たして白塗り美貌の「さぎり姫」に化けているではないか。お城からは狸囃子が聞こえる。つい足が向いて城内に入ってしまう。階段を上ったところで若君の狸吉郎と運命的な出会いをする。時間の経つのは早いもの、願えば何にでもなるという葡萄の一房をプレゼントするが、ちょうどそこに暁の鐘が鳴り始めた。葡萄の実を一つだけ頂いて階段を駆け下りて逃げ出すのだった。森へ入るといつの間にか下女の姿に戻っていた。若君はさぎり姫に逃げ出されポカーンとしてしまった。きぬたが落とされた扇をお渡ししようとするが、それは木の葉だった。

2日目もまた「さぎり姫」はお城に現れ、若君を大いに楽しませたが再び暁の鐘とともに逃げ出す。その際、きぬたとぶつかり姉には正体がバレる。

翌日は若君のお見合いの日、お相手は当然さぎり姫だ。しかしさぎり姫の様子がいつもと違う。許嫁になっても奥方にあらずと言ってゴネる。若君は明日婚礼をすると言って慰める。さらに暁の鐘が鳴っても帰らない。

実はプク助とお黒は白木蓮の木に縛り付けれていた。やっと帰ってきた偽さぎり姫は、きぬただった。手下にプク助とお黒を始末して狸汁にして食べてしまいなと命じて家に帰る。手下がお黒に斬りかかろうとしたところを白木蓮の精が現れ、手下を突風で倒してしまう。そして「明日はめでたき婚礼の日ぞ」と言い、お黒を城へ送り出す。

そして婚礼当日、さぎり姫がなんと二人現れた…。

「歌ふ狸御殿」は、童話シンデレラの翻案である。

しかもオリジナル(紀元前ギリシャで完成したと言われる)や17世紀のペロー童話、19世紀の残酷なグリム童話と全く違い、親族含めてハッピーエンドに終わり、親兄弟を敬う心を忘れてはならないと戦前の文部省も泣いて喜ぶエンディングだった。

ちなみにシンデレラ(灰被り姫)は19世紀に日本に伝わっていたが、坪内逍遥が教科書に「おしん物語」として掲載したことでポピュラーになった。おしんは、シンデレラのシンである。思えば名作朝ドラ「おしん」も日本のシンデレラの半生記を橋田壽賀子が描いたとも考えられる。

歌のシーンでは楠木繁夫の「どうぢゃね元気かね」と伊藤久男の1940年ヒット曲「高原の旅愁」が聴き所。男役の宮城千賀子はあまり冴えない。宝塚歌劇団から大映が強奪してきたのだが、借りてきた猫のようだった。

監督 …………….  木村恵吾
脚本 …………….  木村恵吾
原作 …………….  木村恵吾
撮影 …………….  牧田行正
特殊撮影 ……..  三木滋人
音楽 …………….  佐藤顕雄
作詞 …………….  サトウ・ハチロー
作曲 …………….  古賀政男

配役
お黒 …………….  高山廣子(広子とクレジット)
狸吉郎 …………….宮城千賀子
白木蓮の霊 ……… 雲井八重子
豆狸五六左衛門 ….. 藤川準
きぬた …………….  草笛美子
茂林寺のお福 …..  美ち奴
おたぬ …………….  豆千代
腰元尾花 ……………三原純子
白鬚山の鼓左衛門 …….. 楠木繁夫
ドングリの栗助 ………… 伊藤久男
河童ぶく助 …………….  益田喜頓

歌ふ狸御殿 1942 大映京都

Related posts:


投稿ナビゲーション