昭和24年謎の轢死を遂げた下山国鉄総裁の事件に挑んだ朝日新聞記者矢田喜美雄の実話を映画化した作品。主演は仲代達矢で監督熊井啓、脚本菊島隆三。顔ぶれだけを見ていると東宝映画のような松竹映画(モノクロ映画)だ。

昭和24年戦後インフレのただ中、国とGHQは人員整理を国鉄に要求した。しかし国労はゼネストを行い、社会主義運動の波が日本中に湧き上がる。40代の若さで運輸次官から国鉄の総裁に転任ばかりの下山定則は政府、GHQと労働者の間に挟まれて苦しんでいた。
7月5日朝、下山は出勤途中に三越本店に寄った後に失踪し、翌日未明に常磐線付近で轢死体となって発見される。世に言う下山事件であり、日本中に衝撃が走る。司法解剖した東大法医学教室は死後轢断と判断し捜査2課と東京地検は他殺と判断した。ところが慶應大学法医学教室は轢断面に出血がなくても生体轢断の可能性があるという立場を取り、捜査一課も自殺の見解を持っていた。しかし最終判断は述べられることのないまま年中に捜査一課は捜査本部を解散し、翌年には捜査二課も本部を解散してしまった。時を同じくして朝鮮戦争が始まった。
矢代記者(仲代達矢)は東大法医学教室に出向し捜査に協力していたが、以後新聞記者に戻り大島刑事(山本圭)と協力して捜査を続ける。矢代記者はヌカ油が遺体の衣類に付着していたことから、それらを取り扱う工場と巨大な権力が鍵を握っていると考えた。また総裁を誘拐したという垂れ込みがあったが確証を得るに至らなかった。1964年、垂れ込んだ男(隆大介)が列車に轢き殺されて最後の証人もなくなり事件は公訴時効を迎える。

いわゆるGHQ謀殺説はこの矢田喜美雄の説を土台にしており、色々と尾ひれがついて何年かに一度ベストセラーを生んでいる。
しかし社会派の熊井啓監督と俳優座をはじめとする共産党色が強い俳優陣が扱うとなると話は違う。自殺説は主観に誘導されているし、自殺説をとる捜査一課がGHQの圧力で捜査を投げ出したのだから証拠力が高いと感じない。
下山事件から一ヶ月あまり経った八月に起きた松川事件へのGHQと右翼の関与が濃厚なのに下山事件だけが自殺というのも疑わしい。
偶然起きた下山の自殺事件を利用することを決めたGHQがその後一ヶ月あまりで、再度国鉄を巻き込んだ松川事件を計画して実行したのか。

 

だが今更、謀殺説も時間が経ち過ぎて関係者も亡くなってしまい、物証は弱く状況証拠が多い。結局この事件も迷宮入りなのだ。
ただ教訓として後世に残すべきは、アメリカの言うことを信じてはいけない。

 

キャスト
仲代達矢 矢代
山本圭 大島
浅茅陽子 川田
中谷一郎 遠山部長
橋本功 小野

監督 熊井啓
脚本 菊島隆三
製作 佐藤正之・阿部野人

日本の熱い日々 謀殺・下山事件 1981 俳優座映画放送/松竹

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