ナンセンス・コメディの教科書のような映画だ。ややアナーキーな政治主張を当時の保守的な観客に反発されたので、興行的に失敗作になり、パラマウントからMGMへ移籍することになる。
しかしIMDBで8点近いスコアを残すほど、現代の人々には古典喜劇として受け入れられている。

日本のコメディでも浅草喜劇クレージー・キャッツ、ザ・ドリフターズの元ネタとして重宝がられた。最近は志村けんでもあまりやらなくなった。

自分もドリフ全盛期に見てもマルクス兄弟は面白くも何もなかった。ところが近年は貴重な文化資料として再評価されている。自分もたまに見るとつい笑ってしまう。彼らはアメリカに移住したユダヤ人であり、時代に敏感なトップランナーだったのだ。

この真似をするのに誰でもできるわけでない。コメディアンの資質がある人だけができるものだ。そういえば、有名な鏡のシーンは「ガラスの仮面」で「二人の王女」の大役を掴むオーディションで北島マヤが演じたはず。そんなところにも「我輩はカモである」の影響が残っている。

あらすじ
フリードニア共和国は財政難なので、大富豪ティズデイル夫人は愛人ファイヤフライ氏を首相にする約束で国債を大量購入して国家の窮状を救う。
隣国シルヴェニアの大使トレンティノはディズデイル夫人を口説き落とせばフリードニアは実質的に支配できると思っているが、夫人はファイヤフライにぞっこんだから、そううまくは行かない。
そこでトレンティノはチコリニピンキーの2人をスパイにしてファイヤフライに近付け様子を探らせる。
ところが口うるさい国防大臣を首にしたところだったので、間抜けで御しやすいチコリニをフリードニアの国防大臣してしまう。とんだ二重スパイである。
やがてティズレイル夫人にちょっかいを出し続けるトレンティノに堪忍袋の緒が切れたファイヤフライは彼を侮辱して開戦の火蓋を切ってしまう。

戦争が始まってからは完全にドタバタだが、追い詰められたフリードニアが敵将トレンティノのミスで勝利を収める。最後は勢い余ってティズレイル夫人を撃ってしまう当たり、ブラックでもある。

彼らには1933年に政権を取ったナチスが、ユダヤ人大虐殺を始める未来が見えていただろう。そしてその先見性がヨーロッパに無関心なアメリカの観客に理解されなかった。

68分という短い映画のすべてのシーンが喜劇の基本だ。これを超える喜劇は存在するのかな。喜劇ってここで完成したような気がする。

監督 レオ・マッケリー
脚色 バート・カルマー 、 ハリー・ルビー
台詞 アーサー・シークマン 、 ナット・ペリン
撮影 ヘンリー・シャープ
音楽 バート・カルマー 、 ハリー・ルビー

配役
ファイヤフライ  グルーチョ・マルクス
チコリニ チコ・マルクス
ピンキー  ハーポ・マルクス (口を聞かないが音担当)
ローランド  ゼッポ・マルクス (この作品でチームを脱退)
踊り子ヴェラ  ラクウェル・トレス
トレンティノ大使  ルイス・カルハーン
ティズデイル夫人  マーガレット・デュモン (マルクス兄弟作品にはレギュラーの大柄な老婦人役が多い)

我輩はカモである 1933 パラマウント

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