市川崑監督の東宝作品。安保問題とともに次第に社会性を強めていた頃で、ところが東宝は小さな家に一緒に住んでいた男3人と女3人の家族の複雑に交錯した恋模様を描かせた。
志賀高原の家族スキーで出会い意気投合、名監督井上鉄風と舞踏家諏訪は再婚した。連れ子が監督には独身の息子昌充と妹麻納、舞踏家には娘ミヨが一人。さらにワイルドな監督の弟子須賀輪が一人いる。息子と娘二人は誰が好きかで互いに探りを入れている。とくに昌充は須賀輪にライバル意識丸出しで駆け引きを試みる。
しかし須賀輪が年上の諏訪に告白してしまったばかりに6人のバランスは崩れ去る。
監督に昇格していた須賀輪は「僕は何事も常識で処理したかった」という言葉を残して去る。

エンディングでは一人の男が去っただけで、すべての女は希望を失った顔をしている。エスタブリッシュの常識と戦後を雑草のように生き抜いてきた男の常識は大きく食い違っていた。この井上家は結局、崩壊するかもしれない。

この手のエンディングは、戦前の日本演劇にもあったかもしれぬが、ヨーロッパ映画に多そうだ。

監督は翌年「億万長者」の監督クレジット問題でもめて、結局それが尾を引いて東宝退社と相成った。

 

監督 市川崑
脚色 和田夏十 、 井手俊郎
原作 森本薫
製作 藤本真澄
撮影 玉井正夫
音楽 黛敏郎

配役
鉄風 菅井一郎
諏訪 越路吹雪
ミヨ 岡田茉莉子
麻納 有馬稲子
須賀輪 三國連太郎
昌充 尾棹一浩

愛人 1953 東宝

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