予備校講師の野呂は8年前に妻を亡くし税務署職員の金森宅に下宿している。
下宿にはカン子という24歳の銀行に勤める娘がいて、野呂のお気に入りだ。しかし彼女には中学を出て書生から正職員までなった銀行員の恋人がいる。
世間は軍需景気で庶民の生活が潤う直前で、野呂は予備校生の誘いに乗ってメーデーに参加して皇居前で警官隊と衝突して業務執行妨害罪で拘留される。
無事釈放されたが、新聞にデカデカと写ったばかりに予備校をクビになる。頼りにしていた知人も辞めたばかりで困ってしまう。ちょうどそこへ下宿の奥さんが勤め口を紹介してくれるという。軍需がらみらしいが背に腹は変えられない。早速面接会場へ行こうとすると、恋人に振られ自殺するというカン子の遺書が出て来た。

 

市川崑監督が横山泰三の毎日新聞連載漫画「プーサン」とサンデー毎日連載漫画「ミスガンコ」をベースにして社会風刺映画を作った。
 

プーサンは1950年から1953年まで毎日新聞で連載された後、毎日新聞が漫画の内容に口を挟むので休載され1965年に週刊新潮で連載を再開した。これは1989年まで続いた。週刊新潮でのプーサンは覚えているが、我々のような戦後世代にはユーモアの切れ味は感じられなかった。
 

市川崑も漫画プーサンの本質を見極めていたらしい。1953年当時、朝鮮特需で軍需産業だけは潤ったが、一般には貿易不均衡によるインフレが蔓延している。そこで公職追放や学生問題、労働問題や警察との対立という時事問題を取り上げ、ユーモアは気休め程度で実際はペーソス溢れるイタリア風映画に仕上げてしまう。かと言ってリアリズム映画ではない。あえて言えば実験映画である。
 

市川崑監督はこの作品で便利屋的監督から脱皮して、日本を代表する監督への第一歩を踏み出したと言える。

 

監督 市川崑
脚本 和田夏十
脚本協力 市川崑 、 永来重明
原作 横山泰三
製作 藤本真澄 、 金子正且

 

配役
野呂米吉 伊藤雄之助
金森カン子 越路吹雪
金森風吉 藤原釜足
金森らん 三好栄子
甲賀 小林桂樹
織壁 八千草薫
五津平太 菅井一郎

プーサン 1953 東宝

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