原作者のS.S.ヴァン・ダインはアメリカ合衆国、ヴァージニア州生まれで主にニューヨークで活躍した。美術評論家だが麻薬中毒を患って、たまたま推理小説を書いたところ、デビュー作の「ベンスン殺人事件」から大ヒットした。これは第6作「ケンネル殺人事件」を元にしてマイケル・カーティズ監督が当時の大スター、ウィリアム・パウエルを主演に起用して製作した作品。

あらすじ:
前触れ:
犬の品評会で登場人物が数人現れる。ともに愛犬家である名探偵ファイロ・ヴァンスと第一の被害者コー氏がまず出会い挨拶を交わす。コーの隣人マクドナルドのテリア、ギリーが出場しているが、姪のヒルダは次に戦えば自分のテリアの方が優勝するから賭けたいとコーに金をねだる。ケチなコー氏はこれを撥ねつける。

自宅では弟ブリスベンがシカゴの旅のために準備しながら秘書リーと話している。そこへコーが戻って来て弟を呼びつける。執事ギャンブルは弟に元に行くが、弟は拒絶してシカゴへ旅たつ。秘書リードもヒルダと結婚したいと頼んだがコーに拒否されていた

その夜、マクドナルド氏のテリアが消える。鍵が破壊され犬小屋から逃がされていた。そして外で雨に打たれて死体となって発見される。
その頃、コー氏は他に男を作ったため愛人デラフィールドと別れ話をしていた。怒って愛人宅を出たコーはイタリア人グラッセとばったり出会う。グラッセはイタリアからコーの所有する中国骨董品を買い付けに来ていたが、コーの愛人を奪ったため、買付申出を断固拒否される。
自宅へ戻ったコーはコックのリャンを呼ぶ。リャンはコーが中国骨董品を売却するのが気に入らなくてクビにしてもらって結構と言う。これで重要人物全員登場。ここまで12分しか経っていない。

事件編:
ここから1時間で事件の発生と解決を終えてしまう。さすがファイロ・ヴァンスであるw。

翌朝、コー氏のドアをノックしても返事がない。鍵は内側からかかっていたが、鍵穴から覗くとコーは銃で頭を撃ち抜いて絶命している。
そこで執事と秘書が警察を呼ぶ。ファイロ・ヴァンスもー早く嗅ぎつけて捜査現場に到着する。自殺と主張する検事 刑事、検視医に対してファイロは昨日会っただけで他殺説を主張。しかし検視医が詳しく検視すると他殺であることがわかる。犯人と思しき人間は少なくとも七人いる。ブリスベンの所在が掴めず、彼が持っていた杖が家にあったことから、上映35分ごろ第二の遺体ブリスベンをクローゼットの中から発見。

上映42分ごろドーベルマン犬が殴られて倒れているのを発見。その犬は品評会の主催者デラフィールド嬢の飼い犬だった。ファイロが行くと事件のことを知らなかった。またグラッセと船旅に出かけるところだった。

推理編:
上映時間はあと25分である。
二人を刺し殺した凶器は骨董品のナイフだとわかる。また貴重な壺がなくなってカケラだけが残っている。しかもそのカケラに血痕が残っていた。コー氏は自室ではなく書斎で殺されたのだ。ファイロはリードに尋ねると、中国人コックのリアンが怪しい。台所へ行くとリアンは割れた壺を修復していた。尋問するとリアンは、前夜8時にすでに死体を発見していたのに黙っていた。すわ逮捕かと思われた瞬間、グラッセの指紋が証拠品から出たと報告がある。庭で発見された足跡もグラッセのものだったので警察で事情聴取を受ける。また執事ギャンブルは偽名を使って屋敷に入り込んだが詐欺の前科があることがわかる。そのときマクドナルドが自室で何者かに殺人で使われた凶器で刺される。幸い致命傷ではなかったが、警察は自作自演を疑う。
ファイロは改めて検事の前でコー家と隣の高級マンションの模型使って解説する。コー氏は7時半から8時の間、使用人に暇を取らせて一人で書斎で仕事をしていた。そこで火箸により犯人に殴られて転倒する。コー氏は銃を取り出すが、犯人は骨董品の剣を抜いてコー氏を背中から刺す。隣家のドーベルマンが血の匂いを嗅いで書斎に近付く。気がついた犯人は火箸で殴って昏倒させる。そして凶器の剣を壺に隠そうとして壺を壊してしまう。一方、コー氏は朦朧として刺されたとも気づかず自室に戻りパジャマに着替えたところで絶命する。そこへ弟のブリスベンがやって来て兄が生きていると思い銃を撃つ。そして針と糸のトリックを使って密室を完成する。 ブリスベンが部屋から出たところをコー氏が生き返ったと誤解した犯人が、またブスリと刺殺する。

解決編:
では犯人は誰か。可能性のある人間が複数いる以上、逮捕できない。そこでファイロは罠を仕掛ける。全員を解放して自由を与えて反応を見るのだ。案の定ある男がヒルデと旅行に出かけようとするマクドナルドに喧嘩をふっかけた。

いつもながら最初の十分で怪しい人物を全て登場させるのはアメリカの技だ。原作から枝葉の部分を刈り取り、コンパクトに仕上げてしまう。犯人当ての部分に論理性は無くなってしまったが、もともと穴だらけの原作だから、そう演出することでうまく穴を埋めたと言える。
ファイロ・ヴァンスのシリーズは初見だったがミステリードラマとしては良くできている。パズルゲームとしてはもう少しはっきりミスリードをして欲しかった。おそらく中国人に対する偏見が、当時のアメリカ人にはあったから、リアンが出てくるだけでミスリードになっていたのかも知れない。

 

監督 マイケル・カーティズ(「カサブランカ」1943年アカデミー監督賞受賞)
原作 S・S・ヴァン・ダイン
脚本 ロバート・プレスネル

 

キャスト
名探偵ファイロ・ヴァンス  ウィリアム・パウエル(「影なき男」1934)
姪ヒルダ嬢  メアリー・アスター
ヒース  ユージン・ポーレット
秘書リード  ラルフ・モーガン
愛人デラフィールド  ヘレン・ヴィンソン
グラッセ  ジャック・ラルー
執事ギャンブル  アーサー・ホール
隣人マクドナルド  ポール・ジラルド
コー氏  ロバート・バラット
弟ブリスベン  フランク・コンロイ

ケンネル殺人事件 1933 ワーナーブラザーズ

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