戦災で焼け出された一家は、やっと元のクリーニング屋を開くことができた。
しかし長男に続き夫も病気で死んでしまった。
店はシベリア帰りの木村が手伝ってくれることになった。
未亡人は幼い甥を抱え、木村の手ほどきを受けながら女手一つで馴れない店を切り回すことになる。

見ようによっては、少し物足りなく感じる。
しかしこの映画は当時流行した大映の母物(三益愛子)に対する成瀬巳喜男の解答だろう。
たしかに、大映はやり過ぎている。
なお、この翌年には松竹の重要な母物「日本の悲劇」(木下恵介監督、望月優子主演)が上映される。
当時の若い香川京子には難しい役かと思ったが、そつなく演じている。
母が木村と仲よくなると嫉妬して二人の邪魔をして、しかし二人が別れる段になって、母の幸せとは何だろうかと、考えてしまう。
小津監督の「東京物語」の娘役より幼いが、内面はしっかりしていて、成長を感じさせる娘の役だった。
田中絹代は熱くならず、かといって冷めすぎず、名演だと思う。

配役:
田中絹代 (福原正子)
三島雅夫 (夫福原良作)
片山明彦 (長男福原進)
香川京子 (長女福原年子)
榎並啓子 (次女福原久子)
三好栄子 (おばあさん)
中北千枝子 (妹栗原則子)
岡田英次 (年子の恋人平井信二郎)
加東大介 (夫の弟子木村庄吉)
沢村貞子 (おせい)
スタッフ
監督 : 成瀬巳喜男
製作 : 永島一朗
脚本 : 水木洋子
撮影 : 鈴木博
音楽 : 斎藤一郎

おかあさん 1952 東宝

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